戦略的恋煩い
 今日は律輝にお任せしてデートする日。翻弄されてばかりだから少し困らせるつもりでお任せにしたけど、モテ男がプランするデートとはいかなるものなのだろう。


「見て」

「何?」


 電車で移動中、律輝は自分のスマホを差し出した。受け取って見ると“デート 都内”、“デート 大人”などデートに関する検索履歴がたくさん残っていた。


「調べたの?」

「デートらしいデートって何かと思っていっぱい検索した」


 一生懸命調べてくれたとかかわいすぎる。年下ってずるい。こういう背伸びしないところにアラサー女は母性を根こそぎ持っていかれてキュンキュンしてしまう。


「……かわいい」

「好きになりそう?」


 プライドが邪魔して聞けないような質問も、なんなく訊いてくるからドキリとした。

 ぶっちゃけ好きになりかけてるけど、容姿が良すぎて騙されてるんじゃないのかって不信感が若干残ってる。好きになるのはまだ怖い。


「秘密」

「嘘つき、もう8割くらい落ちてるだろ」


 含みを持たせた発言をしたら、見透かしたように律輝は笑った。なんだ、分かってるんじゃん。図星どころかそれ以上好きになってしまっているから、私は目を泳がすばかりで何も言えなかった。

 今なら100%当たる予言ができる。辻律輝という沼に落ちたら一生這い上がれないだろう、と。
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