戦略的恋煩い
 公共交通機関を乗り継いでたどり着いたのは、正面から見ると波打つような曲面が特徴的な、ガラスの壁面の大きな建造物。

 都内にこんな建物あったんだ。この辺りは公園や美術館が集中してるゾーンだけど、もしかしてここも美術館の類かな。


「ここどこか分かる?」

「分かりませんどこですか」

「その反応するってことは来たことないんだ、よかった」


 律輝は結局ここがどこなのか教えてくれたなかったけど、看板には“美術館“の文字が並んでいた。やっぱり美術館だ、私の勘が当たった。

 
「そういえば美術館デートってしたことないかも」

「そうなんだ、あんまり興味ない?」

「デートはないけど友達と行ったことはあるよ」



 チケットを購入した律輝に話しかけると「俺はひとりでもたまに行くよ」と呟いて館内に向かう。

 意外だな、クールな人ってドライなイメージだから芸術に興味ないと思ってた。確かにイケメンとアートの組み合わせは絵にはなるけど。


「小夏、俺の顔じっと見てどうしたの」
 
「そんなに見つめてた?いや、なんでもないから行こう」


 改めて律輝の造形美を思い知り、私はなぜか緊張してしまった。こんな美形と日中一緒にいるなんて、彼の顔に慣れるまではときめいてばかりだ。

 緊張でデートどころじゃないかもしれないと思ったけど、あっちこっちに興味が向いて程よく緊張が解れ、結果的になかなか楽しめた。
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