戦略的恋煩い
「私みたいなアラサー女は、結婚願望がない人とは付き合いたくない、って思ってるんだけど大丈夫?」


 これまで告白されてもなんとなく流してたけど、今日はちゃんと理由を伝えようと思う。


 話しかけると律輝は顔を上げた。上目遣いの破壊力に負けそうになったけど、必死に耐えて平然とした顔をした。


「小夏、結婚願望あるんだ」

「あるよ、20代のうちに結婚したいって思ってる」

「あと2年しかない」

「そうなの、だから結婚する気がないなら、私と付き合わない方がいいと思う」


 澄ました顔をしてるけど、心臓はバクバクだった。これでもし責任取るつもりないって言われたら、ただの隣人に戻らなきゃいけない。

26歳なんて遊びたいざかりだから、結婚願望があるとは思えないけど。


「結婚願望はない」


 律輝はゆっくり起き上がると、無表情のまま、ぶっきらぼうに言い放つ。

 配慮のない直接的な言葉を突きつけられるとは思わず絶句した。同時に、心のどこかで律輝に期待していた自分に気がつき、なんて愚かなのだろうと項垂れた。
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