戦略的恋煩い
「でも、なんとも思ってない隣人が自分に対して恋愛感情抱いてるとかとか逆の立場だったら怖いし、マッチョが好きなら俺勝ち目ないな、って諦めてた」


 真剣に耳を傾けていたけど、マッチョ好きだと勘違いされていたことがおかしくて吹き出して笑った。


「マッチョが好きなわけじゃないよ!筋肉は兄が聞いてもないのに教えてくるから詳しくなっただけ」

「うん、だから彼氏と思ってた男が兄貴だと知って嬉しかった。全力で落とすしかないって緊張して馬鹿みたいに飲んだら勢いで抱いてしまって、めちゃくちゃ後悔した」


 律輝の中で、あの台風の夜私を抱いたことは想定外だったようだ。緊張してたんだ、かわいい。てっきり手が早い遊び人かと勘違いしてたけど、蓋を開けたらクールで少し不器用な可愛らしい人だった。


「順番間違えて、結果的に警戒させてごめん」


 かわいさを前面に押し出して、しおらしく謝る律輝。相変わらず無表情時との差にギャップを感じて心臓を鷲掴みにされた気分だ。

 どの角度から見ても綺麗な顔立ち。こんな男に言い寄られていること自体が信じられない。

 仮に付き合ったら、徐々に実感が湧いてくるだろうか。
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