戦略的恋煩い
 大丈夫だと断言したものの、それからしばらくして律輝の態度が変わったような気がして仕方ない。


「甘えて、いいですか?」

「どうぞご自由に。俺は小夏の彼氏なので」


 もちろんデートはするし、私の提案はなんでも受け入れてくれる。ベットに寝転んでスマホで動画を見ている律輝に抱きつく。でも最近は、密着していても虚しいと思うようになった。

 律輝は付き合ってたった1か月で、好きとかかわいいと言ってくれなくなった。なんか、狙ってた女を手中に収めたから、これからはもうアプローチしなくていいやって感じに見えた。表情が乏しいのは知ってたけど、本当に私のことが好きなのか不安になる。

小さな不安が募って、ついに今日不満をぶつけることにした。


「私と一緒にいるの、楽しい?」

「嫌だったら突き放してる」

「もっと楽しそうな顔してよ」


 うつむいて小さな声を発すると、律輝は動画を見ていたスマホから視線を外して顔色を変えた。


「怒った?」

「こんなことで怒らないけど、もっと愛情表現して欲しい」

「愛情表現か……俺、別れた原因だいたいそれ。女心が分かってないって」


 なんとなく分かっていたけど、律輝はモテるクセに彼女と続かないのは素っ気ないからだろう。分かっていて改善しないのは律輝の悪癖だろうか。それとも、女なんて他にいくらでもいるから自分が変わらなくていいと思っているのか。


「そんなに悩んでると思ってなかった。ごめん、なるべく頑張るから」

「意識しないと難しいなら、大丈夫だよ」


 だからって無理して愛情表現して欲しいとは思わない。そんなの虚しいだけだ。私はベッドから抜け出そうと起き上がった。しかし、律輝に腕を掴まれて距離を置くことは不可能になった。
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