戦略的恋煩い
「小夏の悩みは見抜けなかったけど、今無理してるのは伝わる」


 振り返ると真摯な眼差しで私を見つめる。その顔をするってことは、私のことは本当に好きってこと?


「もっと図々しく言っていいから」

「じゃあ、好きとかかわいいって言って欲しい……」


 遠慮しない図々しさが必要なら、と願望を口に出す。その途端、ぽろっと涙が零れてしまった。

 元彼と別れてから1年間、独りで平気だと思っていたのに、律輝に愛されたいとこいねがう自分がいることに驚いた。

 不満を吐き出したかと思えば突然泣き出して、律輝は困惑しているに違いない。しかし頬に手を伸ばされ顔を上げると、律輝はかすかに笑っていた。

 なぜ笑っているのか。戸惑っていると不意に体を引き寄せられ押し倒された。上に乗る律輝は体重かけ、ゴリっと硬いものが太ももに当たった。


「……えっ、なんで?」

「ごめん。泣いてる小夏見たら興奮した」

「最低……」


 困惑する私をよそに、律輝は逃げないように私の両腕を押さえつけて口づけを交わす。最低と罵ったにもかかわらず律輝は引くことを知らない。快楽を教えこまれた私は拒む術を知らず、身を任せるしかなかった。
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