戦略的恋煩い
 結局明確な答えは得られないまま、蔑ろにして流されて、甘い熱に溶かされるのか。行為が終われば、火照った体が底冷えしてたまらなく寂しくなるのに。

 暗鬱とした思考の中、愛撫に反応して準備のできた体は、律輝の熱を受け入れてしまった。


「んんっ、はぁ……」

「小夏、俺の顔見て」


 向かい合わせで繋がって、だけど律輝はしばらく動いてくれず、焦れったくて懇願するように律輝を見つめる。すると顔を近づけてきて、わざとリップ音を付けるようにキスをした。


「かわいい」


 唇を離すと、至近距離で吐息をたっぷり含ませた言葉を吐き出す。取ってつけたような発言。それなのに嬉しくて、言葉の端々に含まれた愛情が体の奥に浸透していく。


「っ、なんで、いまさら……」

「こういう甘いの、毎日欲しい?」

「りつ、き……ずるい」


 不意に抽挿が始まり、ろくに言葉も紡げないまま揺さぶられて快楽の波にさらわれる。


「不安にさせてごめん、ちゃんと好きだよ」

「だか、ら……それ、やめ……あッ」


 その日は情事の最中、好きだとかかわいいと何度も言われ、自分で欲しがった言葉なのに照れてしまってしばらく控えてほしいとすら思った。
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