戦略的恋煩い
 律輝と出会って3か月。12月になってしまった。クリスマスムード一色の街をデートしながら、未だに律輝の行動が読めないと頭を悩ませていた。

 もちろん、嫌だと言ったことは改善してくれるしちゃんと愛情表現してくれるようになったし不安はない。今不安に思っていることはただひとつ。


「小夏、手離して」

「え?」

「手繋ぐの、あんまり好きじゃない」

「……ごめん」


 こうやって、律輝は自分を語らないから知らないことが多いということ。言わないだけで嫌だと思ってることいっぱいあるんじゃないかって不安になる。こればっかりは訊いても「別に我慢してない」って返答されるだけだし。

 手繋ぐこと嫌だったんだ、また知らなかったと落ち込んでいると、目の前に律輝が腕を差し出した。


「……ん」

「何?」

「腕組むのは大丈夫。密着するのが嫌いなわけじゃない」

「いいの?」

「うん、寒いから冬はポケットから手出したくないだけ」

「なんだ、ありがと!」


 割としょうもない理由だったけど、てっきり突き放されたと思ったら、改善案を提出してきたことに驚いた。


「……小夏って分かりやすいね」


 嬉しくて腕に抱きつくと、律輝はほんの少し口角を上げて私を見た。出たよ流し目、未だに慣れなくて脈拍がほんの少し早くなる。出会った頃くらい心臓が暴れ出すことはなくなったけど、顔が良すぎるから、色んな仕草が心臓に悪い。


「あ、分かりやすくてかわいい」

「言い直さなくていいから……」


 ほら、突拍子もなく言い換えて私をからかおうとするし。律儀に愛情表現を忘れてないのは偉いけど、最近は面白がってる気がする。

 律輝が私のことを大事にしてくれてるならそれでいいけど。
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