戦略的恋煩い
「そうだね、将来的にはしたいよね」


 たしかに最近、結婚を迫られる機会が増えたような気がするけど、その場のノリというか、酔いの勢いだと思ってた。でも今は素面だし、ノリとかで言ってる表情ではない。違和感を覚えたから、ちょっと怖いけど聞いてみるとするか。


「律輝って、すぐに結婚しなきゃいけない理由でもある?」

「ないけど、小夏はまだ結婚は早いって思う?結婚したいって言ってなかった?」

「さすがに付き合って2か月は早すぎるかも……」

「それは世間一般の意見だろ。小夏は?」

「律輝が浮気やギャンブルしなくて、借金や変な宗教に加入してないなら結婚したい。あと……律輝と結婚したら親の介護がついてくるとかなら事前に言って欲しい」


 勢いで言っちゃえ、と全部吐き出して律輝の反応を伺ったけど、その目に動揺は見られない。あれ、違った?じゃあなんで早く結婚したくて焦ってるのだろう。


「大丈夫、全部クリアしてる。ちなみに両親は元気。まだ40代だから働いてるし」

「待って、まだご両親40代なの!?」


むしろ律輝の新情報に私が思いっきり動揺はしてしまった。


「俺は母さんが16、父さんが18の時の子だからふたりともまだ40代。現役で長距離トラックの運転手」

「ご両親が長距離トラックの運転手?」

「うん、もう家のローン払い終わったから本当は働かなくていいけど、新婚旅行に行けなかったから金貯めて世界一周旅行したいらしい」


 意外すぎた、律輝って有名大学の出身らしいし現在は総合商社勤めだし、勝ち組みたいな人生送ってるから、てっきりご両親も同様のタイプかと。

 リアルに“トンビが鷹を産む”の具体例に遭遇してしまったと、失礼なことを思ってしまった。
< 56 / 72 >

この作品をシェア

pagetop