戦略的恋煩い
「イケメンで高収入の彼氏って付け加えた方がよかった?」

「それ自分で言っちゃう?」

「紛うことなき事実だろ」

「自己肯定感高いの羨ましい……」


 笑ってひいひい言いながら律輝にもたれかかる。律輝がいて良かった、一瞬で元彼のことなんかどうでも良くなっちゃった。


「小夏はもっと自惚れていいよ」


 律輝は笑う私を愛しそうに見つめながら、そっと頬にキスをする。何気ないスキンシップが幸せ。甘えたり甘えられたり、お互い自然体で私たちはいい関係のカップルだと思う。


「ごめんね、嫌なもの見せて」

「大丈夫、小夏がそいつに興味無いのは知ってるから」


 だからこそ、不安要素は排除しなきゃいけない。一応説明しておこうとしたけどその前に分かってくれた。律輝って本当に変わってる。他人に興味無さそうなのに私のことはよく見てるんだから。

 だけどその視線が妙に熱っぽくて、不思議に思って首を傾げた。


「それ、どういう表情?」

「抱きたくて仕方ないって顔」


 瞳に妖しい光を灯して妖艶に笑う律輝。相変わらずその豹変加減にはついていけない。捕食者に狙われた獲物の気分なのに、劣情を孕んだその目に捕らわれたら最後、逃げる思考すら奪われてしまう。


「律輝、嫉妬してる?」

「してないけど、俺以外の男のこと微塵も考えないで欲しいから俺で満たしたい」


 してないと言いながら、嫉妬心を剥き出しにしている。表情に出ていなくても手つきや態度で判断できた。


「だめ?」

「……いいよ、律輝の好きにして」


 律輝がもっと自惚れていいと誘うなら、自分の欲に従う。両手を広げ、律輝を抱きしめた私は自ら抱かれることを選んだ。
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