戦略的恋煩い
 興奮気味で意気揚々と帰宅したけど、スマホに1件新着メッセージが届いてることに気がついて、一気に失速した。そこには、職場の上司から“青山さん結婚するんだね”という一文が。

 ひょっとして、元カレとの一部始終を誰か見てた?怒りで周りが見えてなかったけど、一矢報いたあの場が会社の敷地内であったということを思い出し血の気が引いた。


「ただいま……」

「元気ないね、大丈夫?」


 律輝の家で“クリスマスイブ前夜祭”とかいってバカみたいに飲んではしゃぐ予定だったのに、とてもじゃないけど今そんな気分になれない。

 律輝は真っ青であろう私の顔を見るなり近寄ってきて「寒かった?」と抱きしめてくれた。優しさが染みると同時に、今日起きた出来事を話さねばと口を開いた。


「ごめん……勢い余って結婚するって職場の人に言っちゃった」

「いいよ、結婚しよう」


 恐る恐る言葉にしたのに、いつもの調子で食い気味に承諾したものだから律輝の顔を二度見した。
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