戦略的恋煩い
 律輝は腕を組んで眉をひそめる。


「小夏は、見返してやりたいとか思わない?」

「元カレに?今後一生私の人生に関わらないでもらえたらそれでいい」

「俺のことダシにしていいから徹底的に反撃したら?それで寿退社して、幸せそうな姿見せつけてそいつの手の届かないところに行けばいい」


 事を荒立てたくない私とは違い、律輝は徹底抗戦の意志を見せた。確かに、逆の立場なら完膚なきまでに叩きのめして欲しいかも。

 そんなことより、さっきから結婚とか寿退社とか……まさかこの場でプロポーズする気?


「そいつが絶対買えないような婚約指輪用意するから」

「プロポーズ!?」

「こんなロマンチックの欠片もないプロポーズあってたまるか」


 ついに婚約指輪なんて言い出したから驚いて聞き返すと、律輝はムッと口を尖らせた。律輝の中では、プロポーズとはロマンチックなものらしい。そういうの淡白だと思ってたから意外だ。

こんなところにも意外性が隠れていたなんてと、少し得した気分だった。
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