幼馴染みは御曹司+上司様

幼馴染みⅠ

ーーって、今に至る……。

青年(そのひと)の車に乗せられて、辿り着いた場所は……わたしが働いているビルよりも大きくて背の高いビルだった。
そのビルの地下駐車場へと車を停めた。

車のエンジンを止めると、すぐさま青年(そのひと)は車から降りて、わたしのいる助手席へとやって来て、ドアを開けた。

「ほらっ……」

「きゃぁっ!?」

わたしは再び、青年(そのひと)にお姫様抱っこされた。

青年(そのひと)はわたしをお姫様抱っこしたまま……器用にわたしの鞄と青年(じぶん)の鞄も持って、建物の中へと入り、エレベーターへと乗り込んだんだ。

エレベーターは真っ直ぐに目的の階ー最上階に停まって、青年(そのひと)は廊下をスタスタと奥へと向かって歩いていく……。

……どこに……向かってるの……?

会議室を出てからというもの……青年(そのひと)はどこに行くのか、行き先を全く教えてくれない……と、いうこともあって、わたしの心の中は不安と恐怖心がどんどん膨れ上がっていった……。

何が……一体、どうなってるの……。
もーー意味分かんないよーー(泣)

とっ、とにかく……この状況をどうにかしなきゃ……!

どこに向かっているのかも、もちろん気になってはいるけど……とにかくお姫様抱っこが恥ずかしすぎるっー!!
誰かに見られたらっ……。

「おっ、降ろして……くっ、くだ……さいっ……!」

意を決して、声を張り上げた。

「……」

自分では大きな声で言った、つもり……。
聞こえてないの……?
それとも、無視を決め込んでるの……?

青年(そのひと)は無言のまま……。
ちらりともこっちを見てもくれなかった……。

「あっ、あのっ!」

必死になって声をかけるけど……
「……」
無言……。

うー。
ヘコむ……。

こら、莉央!
こんなことでめげない、めげないっ!!

何とか降ろしてもらおうと、あたしは身動ぐ……。

「ふぅー」

ため息……?

「大人しくしないと……落ちて、怪我するけど?」

チラッ……。

青年(そのひと)がわたしに視線を向けた。

「おつ、降ろしてっ……下さいっ!」

わたしは青年(そのひと)の言葉も聞かず…なおも訴えながら、身動ぎ続けた。

「……やれやれ……」

ーーっ!?

突然、身体(からだ)がふわっ……と、浮く感覚を感じた。

それまでスタスタと歩いていた青年(そのひと)がよろけて、体勢を崩しかけたんだ!

「……あっ!」
 
「きゃっ!」

わたしは反射的に慌てて、青年(そのひと)にしがみつく。

「……落とすわけないじゃんっ!」

「……えっ……?」

「……怖がらせて、ごめんっ……」

ニッと、いたずらっ子のような……意地悪な笑顔を浮かべて言った。

「最初から……大人しく、身を預けとけばいいんだよっ! 莉央」

「えっ……どうして、私の名前……」

キョトン……と、する……。

「……覚えて、ない……?」

「……」

「本当に……覚えてないのか……?」

ー覚えてないのか……?ー
……って、言われても……。

あなた……一体、誰……?

頭の中を『(はてなマーク)』がいっぱい浮かんでいる……。

わたしは不思議そうに青年(そのひと)のことを見上げて、顔をじっ…と見つめた……。

不意に……青年(そのひと)の瞳が淋しそうな……切ない色を見せて顔を曇らせた……。

「……哀しいな……」

とくんっ……。

何故か、切なさが胸をしめつける……。

「……っ……」

……どうして……?

わたしにバレないように……青年(そのひと)が小さく息を吐いた…。

「まぁ……無理もないか……。あれから……14年も経ってるもんな……」

「……?」

ぼそり……と、まるで独り言のように呟かれた言葉……。

青年(そのひと)の言葉にわたしの頭の中はさらに『|?(はてなマーク)』が増えていった……。

わたしを見つめ続ける切なげな瞳……。

とくんっ……。

そんな顔……しないで……。
痛い……。

さらにぎゅーっと、胸をしめつけられて苦しい……。

ゆっくりと、青年の唇が動いた……。
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