幼馴染みは御曹司+上司様

わたしは飛んでくる土が身体(からだ)にあたると思い、咄嗟に目を瞑って、身構えた。

ーーえっ……。

わたしが感じたのはざらりとした土の感覚ではなく、ぬくもり(・・・・)だった……。

そーっ目を開けると……いつの間にか恭くんが傍にいて、男の子が蹴り上げた土がわたしにかからないように抱きしめて庇ってくれていたんだ……。

「なっ、何……やってんだよっ!?」

男の子が蹴った土が地面へと落ちた後、すぐに恭くんが鋭い瞳で男の子3人を睨みつけながら叫んだ。

「きょっ……恭平っ……!?」

恭くんが現れたことに男の子三人が一瞬たじろぐ……。

「きょう……くん……」

一目見てすぐに分かった……。

明らかに体調がよくない……。

走ってきたにしては変な息つぎをしてるし、平気そうにしてるけどいつもよりも元気がなさそう……。
若干、ふらついているようにも見えた……。
恭くんの様子からまだ、病気が治っていないことはすぐに分かった……。

「お前……」

男の子３人も同じように恭くんがまだ、体調が悪いことに気づいたようで……ニヤッと不気味な笑みを浮かべて、仲間内で静かに目配せをした……。

「やっちぃまえっ!!」

その言葉を合図に拳や足が恭くんの身体(からだ)めがけて勢いよく振り下ろされた……。

その途端……恭くんが咄嗟にわたしに拳や蹴りが当たらないようにさらに強く抱きしめてくれた。

そのお陰でわたしの身体(からだ)には拳や蹴りが入ることはなかったけれど……恭くんの身体(からだ)には次から次へと絶え間なく、拳や蹴りが入って、その度に恭くんの身体(からだ)越しに衝撃を感じると同時に鈍い音が私の耳に届いた……。

時折、男の子がわざと靴先で蹴り上げた土が空中に舞い、恭くんの身体(からだ)へと降り注ぐ……。
その中には土だけじゃなく小石も混ざってあるようで、「くっ……」と、小さく苦しそうな呻く声が微かに聞こえた。

……恭くん……。

恭くんのことが心配で声をかけたかったけど……辺り一面を舞う土煙が視界と新鮮な空気をも奪っていって、わたしは思うように息ができなくて言葉を発するどころではなくなっていたんだ……。

やめて……。
もう、やめてよ……。
くっ、苦しい……。
肺が……いたい……。

そう、心の中で訴えながら、わたしは無意識のうちに新鮮な空気を身体(からだ)に取り入れようと口を開くも……入ってくるのは砂埃を含んだ空気でますます息苦しさを感じ、いつ終わるかも分からないこの状態に怯えていた……。

男の子3人は恭くんに反撃の隙を与えまいと絶え間なく暴力を振り続け、恭くんは雨のように降ってくる暴言と暴力がわたしにあたらないように……と、ひたすら身体(からだ)を張って守ってくれた……。

どのくらいの時間(とき)が経ったのだろう……。

ピタッ……と、暴言と暴力の雨が止んだ……。

「……このくらいにしといてやるよっ！」

「ふんっ!!」

「よわっちぃーのっ!!」

気が済んだみたいで男の子3人はとても満足そうな笑みを浮かべていた。
息を切らせつつも、去り際まで好き放題わたしと恭くんの悪口を言いながら、表の公園に向かって駆けていった……。