幼馴染みは御曹司+上司様
わたしは『恭くん』と、言いたかったけど……言葉が出てこなかった……。

すぐ傍にいる恭くんがゆっくりと身体(からだ)を起こして、わたしに視線を向けた。

「……莉央……」

眉を寄せ、心配げな表情を浮かべながら、わたしとの距離を縮めた。

「……だい、じょうぶ……か……?」

コク……。

「……ケガ……しなかったか?」

コク……。

わたしは……小さく頷くのがやっと、だった……。

「……良かった……」

ニコッ……と、恭くんが笑った。
殴られ、蹴られた身体(からだ)が所々痛いはずなのに……。

「ーーっ……」

恭くんの笑う姿を見て……。

ポロッ……。

涙が溢れた……。

「おっ、おいっ……莉央っ! やっぱり、痛いとこあるんじゃっ……」

わたしの泣く姿を見て、恭くんが慌てふためいた……。

「……っ」

わたしは勢いよく、首を左右に振った。

「……じゃ……なん、で……」

「ごっ……めん、ね……。わっ、わたしの……せいで、きょ……う、くん……けが……して、る……もん……」

泣きながら喋るものだから……言葉は途切れ途切れになり、とても聞き取りずらくなってしまった……。

恭くんは殴られたり、蹴られたりした勢いで地面に倒れこんでしまっていた……。

倒れこんだ時と土煙が舞い上がった時についた土が、所々についていて、服は汚れていた。

Tシャツや半ズボンからのぞく手足にも土がついていたけど……それよりも()にとまったのは……擦り傷と小石があたった所が赤くなっていたこと……。

男の子3人組の誰かの拳が当たったのだろう……。
右頬が少し腫れあがっていた。

「あぁ……こんなん唾つけときゃー治るって!」

「でっ、でもっ……」

「気にすんなっ!」

恭くんはあっけらかんと言ったけど……。

わたしは……申し訳なくて……。

「……ごっ、ごめ……ん、ね……。きょ……う、く……ん……。ご……めっ、ん……ね……わっ、わた……しの……」

謝り続けた……。
それしか、出来なかったから……。

「莉央のせいじゃないっ……」

土がついた手を服で拭き、ポンポンと頭を優しく撫でた。

「……っ……」

「莉央……」

すっ……と、差し出された指先……。

「……泣くなっ」

そっ……と、わたしの頬に触れ、指先で涙を拭った。

「ーーっ……」

「俺は、大丈夫だからっ!」

「……きょ……う、く……ん……」

「もう、泣くな」

ぎゅっ。

恭くんに抱きしめられた……。

「ヒーローは困ってる人を助けて、泣いてる人を笑顔にするんだ。俺は……莉央が無事で、いつも笑っててくれたら……それでいい」

「ーーっ……」

とくんっ……。

鼓動が切なく、高鳴った。

ーー恭くん……。

わたしの初恋ーー……。
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