幼馴染みは御曹司+上司様
「しっ、失礼しますっ!」

私は勢いよく頭を下げた。

私の発言(ことば)でコピーが壊れていることを思い出した次長がほんの数秒、固まった後……サーッと、血の気のひいた真っ青な表情(かお)
「と、と、と……とりあえず、べっ別の、部しょっ、の……コピー機をかし、てもらいなさいっ!!」と、慌てふためきながら、告げたんだ……。

私は次長の言葉に従って他の部署へと走って、ドアをノックすると同時に「コピー機を貸してもらいたい」という旨を伝えたのだった。

引っ込み思案な自分から初対面の人に話しかけたんだもの……上出来だ。

それが例え……
拙い言葉になっていようと……
声がうわずっていたとしても……自分からしてみれば……頑張った。

さっさとコピーして戻らないと……って、思ってるのに……。

先客あり。

ここの部署の女性社員が……さっきからずっとかわってくれない……。

「あと、少しだから……」と、言うばかり……。

もう、ゆうに……10分は経ってるよっ!
いつまでかかるんですか!
「あと、少しだから……」って、ホントにあと、少しですか!?
……と、私は心の中で1人ツッコミを入れまくってる……。

言えない。
言えるはずがない……。

コピー機はここの部署のもの。
我が物顔で自分の都合を優先して使えるわけがない。

しかも、わたしは新人だ。
どう見ても……先客は先輩。しかも、かなりの……。

今か……今か……と、待つことさらに20分……。

「ごめんなさいね~。はい、どーぞ」

にっこり満面の笑顔。
語尾には「♡」もついてそうな言い方。

わたしもニコッ……と、微笑み返すも……上手く笑えているか、自信も……ない。

「ありがとうございます。使わせて頂きますね」

「はーい。大変ね~。コピー取るのに別の部署に来て……」

「そうですね」

いやいや、あなた様が早く変わってくれたら……こんなに待たされることなかったと、思うんですけど……。
と、言い返したい……けど、言い返せるわけもなく……そっと心の中に言葉をし舞い込む。

急がなきゃ!

次長がさっき受けていた電話は取引の先の方だった。
先方の都合で約束の時間を早めてほしい……と、いうことだった。

リズムよくコピーされてゆく音を聞きながら腕時計を見る。

……いけないっ……!
急がないとっ!!

約束の時間、十五分前だ。

会議室まで走っていけば……先方の方がつく前に、次長の元へ届けられる。

最後の一枚が印刷され、お礼を伝えようとすると……私の前にコピーしていた女性社員がまだ側にいて話しかけてきた。

「ねぇ……」

「……はっ……はい……」

嫌な予感……。

「コピー機使わさせてあげたんだからコピー用紙……備品室から運ぶの手伝って……」

こそっ……と、言われた。

予感は見事に的中!

嬉しくない……。

断ることはもちろん……出来ず……。

「はいっ! わたし、行ってきます!!」

一刻も早く、課長にコピーしたての企画書を届けるべく……大急ぎで備品室へと向かった。

女性社員に「手伝って……」と、言われたけど……一緒にしてたら時間ばかりかかるような気がした。

だから……わたしは一人でさっさと、備品室へと向かったんだ。

その勢いは物凄かった……と、思う……。

そうでもしないと……間に合わないんだもんっ!!

コピー用紙を台車に乗せ、運び終わると……。

コピー機を使わせて頂いたことへのお礼を丁寧に伝えて再び、台車を片付けに備品室へと戻った。

そこから次長がいる会議室へと……猛ダッシュ!!

コンコン。

息と身なりを整えてから会議室のドアをノックしたーー……。
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