幼馴染みは御曹司+上司様
「へっ!?」

「えっ!?」

次長とわたしは同時に言葉を発した。

しかも……素頓狂な顔で。

多分……。

間違いなく、きっと……わたしと次長は同じ表情を浮かべて困惑していた……と、思う……。

「……聞こえませんでしたか?」

ニコッと優しい微笑みを浮かべ、穏やかに話す青年の姿は美しくて……目を引く。
けれど……青年(そのひと)が纏う雰囲気は周りの空気をもピリッと、凍りつかせているような気がした……。

怒りのオーラ……って、やつ?

ひしひしと、無言の圧を感じる……。

気のせいではなさそう……。

……怖い……。

「……えっ、と……」

困惑し、たじろぎながらも……この場に合った言葉を紡ごうとする次長の姿が情けなくも、格好良くて頼りがいのある上司に見えた。

いつもはただ嫌みをいうだけの厄介な中年男性(おっさん)と、しか思わないのに……。

「はぁ……」

青年(そのひと)は頭を抱えて大袈裟なため息を吐く……。

「……気を悪くさせてしまったら、申し訳ないのですが……」

前置きをし、青年(そのひと)は淡々と話した。

「こちらの都合で約束の時間を早めて頂いたことに関しましては……悪いと思います。しかし、電話で確認を取り、快く了承したのはそちらですから……きちんと、それ相応の対応をして頂けるものだと、僕は理解していたのですが……」

「……はっ、はい……」

「結果的にはそうでは、なかった……。非常に残念でなりません。難しいのなら……何故、難しいと一言、電話口で伝えて下さらなかったのですか? そちらには、そちらのご都合がありますよね? それも伝えられず、待たされた上……この有り様…失礼にも程がある……。そう、思いませんか? 次長(・・)……」

「うっ……」

ごもっともな意見に何も言えない……。
言えるはずも、ない……。

言い訳など、言語道断!
口にしようものなら……先方を怒らすだけ。

こちらに非があるのは明らかなのだから……。

そもそもこんなはずじゃなかった……。

予想外のハプニングが次々に起こってしまったせい!

だって……(前日からだけど)コピー機は壊れるし……。

他の部署で数枚コピーさせてもらおうと訪れるも……そこには先輩の女子社員がいて、急いでいるからといってほぼ新人であるわたしが『早く、かわって下さい』と、言えるはずもなく……待ち続け、備品室までコピー用紙を取りに行く始末……。

わたしがバタバタしている間に……先方との約束の時間は刻一刻と迫って……待たせてしまった……。
挙げ句の果てに書類が部屋の中を舞う……と。

今はわたしのせいで次長はその尻拭いに追われる羽目になってるし……。

あぁ……何、やってるんだろう……。
情けないっ……!

次長……ごめんなさいっ!!

申し訳なさすぎて……まともに次長の顔が見れない……。
自然と視線が床へと下がって、わたしは俯いた……

次長はきっと先方に分からないよーに、ものすっごーい怒りの表情であたしのこと……睨んでるよね……?

後で絶対……呼び出し(せっきょう)だ……(涙)
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