都合よく扱われるくらいなら家を出ます!~可愛すぎる弟のために奔走していたら大逆転していました~
第一章
「はあ……」
思わず溜(ため)息(いき)が口から漏れる。溜息ばかり吐(つ)いていると、幸せが逃げると言ったのは誰だったか。
とはいえ、現状私から逃げ出す幸せなんて、殆(ほとん)どない。
「ちょっと! 洗濯が終わってないわよ!! とっとと終わらせなさい! グズが!」
背後から金切り声が響く。ちらりと振り返ると、厚化粧の女がこちらを睨(にら)んでいた。
「ちょっとお! 私の部屋、掃除がまだなんだけどー? いつまで待たせる訳ー? あれじゃお客の一人も呼べないじゃない。ほーんと、使えないんだから」
厚化粧の女の背後から、ひねた顔の少女がやってくる。この二人、親子なんだけど意地の悪そうな顔がそっくり。
そのそっくり親子は、私を見てにやにや笑っている。私に命令出来るのが、心底嬉しそう。
「おい! 俺の靴が磨いてないぞ! もう出掛ける時間だってのに、何をやっている!」
更に二人の女の後ろから、でっぷりと太った男がやってきてキーキー喚(わめ)いた。
洗濯くらい自分でやれ! それもあんたのは下着じゃないの! 他人に自分のパンツ洗わせていい気になるなんて、どういう育ち方してるのよ!
部屋の掃除も自分でやりなさい! 大体、お客なんて来た事、一回もないくせに! 来客を心配する必要、ないね!
自分の靴は自分で磨きましょう! もっとも、安物だから磨いたところで変わらないけどね!
全て目の前の三人に言いたい。でも、言う訳にいかない。
「わかりました」
口に出すのは、これだけ。私、ストレスでそろそろ倒れそう。
お母様の『気を強く持つのよ』という言葉。あれだけ意味がよくわからなかったのだけれど、今ならわかる。先程の連中の事を言っていたんだわ。
あいつらは、私の父方の叔父(おじ)だという。そんな連中が何故我が家であんなに偉そうにしているかと言えば、叔父が私と弟の「後見人」だから。
親を亡くした貴族の子女は、後見人の手により養育される。後見人は王宮に申請し、許可を得た者しかなれないそう。
これは、お母様の葬(そう)儀(ぎ)を取り仕切ってくれた人が教えてくれた内容。我が家が顧客になっている商会の会頭で、亡き両親とは古馴(な)染(じ)みなんですって。
その王宮に認められた後見人が、叔父……らしい。
『俺がこれからお前達の後見をするカムドンだ。お前達の父親の弟に当たる。俺の言葉にはしっかり従えよ?』
これが、後見人として我が家に初めてやってきた時の、叔父……カムドンの言葉だった。
普通、親を亡くしたばかりの子供に、こんな事言う? そのあまりの酷い態度に、最初は叔父だというのも、後見人だというのも信じられなかった。
騙(だま)されてるんじゃないかと思ったんだけど、会頭が言うには証明書に押された印が本物なので、間違いないそう。これ、偽造すると大変な罪になるんですって。
そこからが、私達にとっての地獄の始まりだったのよね……。
叔父は一家で我が家に乗り込み、まず最初に家中をひっくり返した。金目のものを探していたみたい。
その結果、大したものがなかったと癇(かん)癪(しゃく)を起こし、ウードを蹴ろうとしたのよ!
咄(とっ)嗟(さ)に私が庇(かば)ったから、あの子は怪我をしなかったけれど。
叔父はビヤ樽(だる)のような体をしているから、小さなウードが蹴られたりしたら、怪我では済まなかったかもしれない。あの子、まだ四歳だったのよ?
私も、酷い痛みに意識が飛びそうだったもの。
そして、その後がまた酷かった。あの悪魔、私を裸に剥(む)こうとしたのよ! いきなり私の部屋に入ってきて、やったのがそれ。ど変態め。ロリコン駄目! 絶対!
何とか相手の手を噛んで逃げ出したけれど、あの時は本当に危なかった。思い出しただけで、怖気がふるうわ。
そういえばあの叔父、人をひん剥こうとしてた時、『インショウガーインショウガー』って騒いでいたわね。こっちの世界にも、印象画なんてあるのかしら。
その後も、それなりに残っていた使用人を解雇し、家事は全て私がやる事になった。私、これでも伯爵令嬢ですが?
叔父はどうだから知らないけれど、叔父の妻と娘は自分達より身分が上の私をこき使えるのが楽しかったみたい。あの家、騎士爵家だそうだから。
騎士爵家は貴族の中でも最下位で、一応「爵」と付いてはいるけれど、爵位持ちとしては認められていないらしいの。
多分、そのあたりがコンプレックスなんだと思う。だからといって、私をこき使って、気分次第で蹴ったりものを投げたりしたのは許さないけどね!
前世日本人としての記憶があると、この世界は本当に異世界なんだなと思わされる。
その一つが【魔法】。そしてもう一つが、【異能】。
この二つには明確な区別方法があって、後天的で魔力を消費し、法則に則って事象を変えるものが魔法。先天的で魔力を使わず、法則も何もなく発動するのが異能。
魔法は魔力持ちが法則を勉強し、長年努力を重ねた末に手に入れるもので、異能は生まれつき使える能力……くらいの認識でいいと思う。
そして私は、この異能を持っている。ただし、戦闘には一切使えないもので、【洗浄】と【治癒】というもの。
この異能、私が前世の記憶を完全に取り戻した頃に使えるようになった。もしかしたら、そのあたりが関係しているのかも。
でも、どうせ異能を授かるのなら、攻撃系の力が欲しかったわ。そうすれば、今頃あの悪魔な叔父一家は……いいえ、これ以上はいけない。
ともかく、異能を使えるようになったのはまだ幼い頃で、当然親には話しておいた。お母様、とても驚いてらしたっけ。
その後、誰にも言わないようにって、きつく口止めされた。異能は、魔法と違って持っている人が少ないから、身の危険があるんですって。ショボい異能だと思うんだけれど。
そのショボい異能は、実生活ではなかなか役に立っている。
洗浄はその名の通り、掃除や洗濯に使えて、ちょっと範囲を意識して異能を発動させれば、どんな頑固な汚れでもたちまちのうちに消えてしまう能力。
治癒の方は、魔法の治癒には遠く及ばないけれど、ちょっとした怪我などを治せる。あと、怪我と痛みを分けて消せるのも、便利なところかな。
ただし、病気は治せない。だって、お母様を治せなかったから。寝付くようになってから、何度か治癒を試してみたんだけれど、効果はまったくなかった。
お母様は怒る事も落胆する事もなく、『ありがとう』と微笑んでくれたけれど。私の異能が、もっと強かったら、お母様を救えたのかもしれない。
そうすれば、幼いウードは母親を亡くさずに済んだ。もちろん、私だってお母様に側に居ていただきたかったわ。今を考えると、余計にね。
ともかく、この二つの異能により、叔父一家からの嫌がらせや体罰なんかは何とかなっている。あ、あと前世の記憶も。
これのおかげで、病まずに済んでると思うんだ。まさか、今の状況があるのをわかって、前世の記憶を持ったまま転生した訳じゃないわよね?
ともかく、私は弟が我が家を継ぐその日まで、弟を護り抜く! お母様にも約束したんだもの。頑張らなきゃ。
私の十六歳の誕生日を四カ月後に控えたある日、いつものように掃除をしていると、叔父に呼び出しを受けた。
場所は、叔父が勝手に占拠した、亡きお父様の部屋。何我が物顔で使っているんだか。
ここには、お父様との思い出が詰まっているのに!
この部屋の大きな椅子に座るお父様の膝に乗って、よく本を読んでもらっていた。この国、子供向けの絵本があるのよ。
大好きな絵本を、大好きなお父様の膝で読むのは、私の楽しみだったのに。
そのお父様の部屋は、今やビヤ樽に占拠されてしまっている……本当、腹立たしいったら!
そんな感情は表に出さず、無表情を貫く。これも、叔父達が気に入らない点だそうだけど、構うものですか。
私が笑顔を見せるのは、ウードにだけなのよ!
「やっと来たか。遅いではないか」
それはあなた達が酷く汚した服を洗濯していたからですよ。まったく、下着まであんなに汚すなんて、どういう使い方をしているのかしら。異能を使うから洗濯は一瞬だけど、数が多くて。
でも、口には出さない。私の様子に、叔父は鼻を鳴らした。
「ふん! 相変わらず可愛げのない娘だ。まあいい。喜べ、お前の結婚が決まったぞ」
「は?」
さすがに、声が出てしまったわよ。この男、今結婚って言った?
訝(いぶか)しむ私に、叔父は嬉(き)々(き)として話し出す。
「トンスガン男爵様が、お前の事を嫁に欲しいそうだ。いい話だろう?」
にやにやと下(げ)卑(び)た顔で笑う叔父を見るだけで、この話が決して『いい話』ではない事がわかる。バレバレなのよ。
叔父の妻が、叔父とよく似た笑い方で、小さめの肖像画を出してきた。そこには、目の前の叔父よりも年が上の、とても貴族に見えない老人が描かれていた。
え……まさか、これが結婚相手だって言うの?
「式はお前の十六歳の誕生日当日だ。それまで、せいぜい身を清めておくのだな!」
ゲラゲラと笑う叔父夫婦から部屋を追い出され、廊下で呆(ぼう)然(ぜん)としていたら、叔父の娘がやってきた。
「こんなところで何をしてんのよ。とっとと仕事に戻って……ああ。あんた、あの話を聞いたんだ?」
娘は、こちらを見て両親そっくりの、下卑た笑みを浮かべる。
「あの爺(じい)さん、若い娘が好きな事で有名なんですってねえ。でも、伯爵家の娘ではあっても、今は使用人同然のあんたみたいな女を嫁に望んでくれるのなんて、あの爺さんくらいでしょうよ! せいぜいお父様に感謝して嫁ぎなさいな」
ゲラゲラ笑う娘は、そのまま廊下の向こうへ消えていく。
どうして、今、私は彼等をこの世界から消す力を持っていないのかしら。今だけは、洗浄と治癒でなく、消去とか暗黒なんちゃらって力が欲しいわ。
廊下で拳を握りしめていたら、背後から声が掛かった。
「姉様? どうしたの?」
「ウード」
ああ、先程までの黒い何かが洗い浄められていく……やだ、うちの弟ってば、そんな能力を持っていたの?
それはともかく、不安そうな弟を安心させなきゃ。
「何でもないわ。行きましょう、ウード」
「本当? 本当に何でもない? また、あの人達に虐(いじ)められてない?」
もう! 本当にうちの弟は何て優しいの! 天使! マジ天使!
「大丈夫よ。私が強い事は、ウードも知っているでしょう? 心配しないで」
「……うん」
むー。これは誤魔化せてはいないな。ウードは年の割に利発な子だから。でも、これ以上は言えないし。
まさか、無理矢理嫁がされそうになっている……なんてね。余計心配掛けちゃう。
私達の部屋は、使用人用の半地下にある。おかげで冬は寒いし夏はジメジメして不快指数が高い。
今日の仕事を全て終え、寝間着に着替えてベッドに入る。この固くて狭いベッドも、六年近く使ってれば慣れるものね。
昼間の、叔父達の話を思い出す。こんな時期に結婚の話を持ってきた裏は、もうわかっている。
私が、十六歳になるから。ここ、セネリア王国では、満十六歳で成人する。そして、これが一番大きいんだけど、成人になれば、後見人がいらなくなる。
叔父一家が我が家で大きな顔をしていられるのも、後見人という立場があればこそ。でも、貴族家に一人でも成人がいれば、後見人は必要ない。
我が家で言えば、私がウードの後見人という立場に自動的になるので、あの子が成人して伯爵位を継ぐまで、この家で見守れるって訳。
叔父は、それを阻止したいのだろう。
それにしても、財政状況が悪い我が家の後見人なんて、いつまでもやっていたいものかしら? そこだけは不思議なのよねえ。
とはいえ、今考えるべきは弟の事! 何としても、フェールナー伯爵位を弟に継がせなくては!
私が家を出されたら、あの叔父一家の事だもの。これ幸いとウードを使って伯爵家を乗っ取りかねないわ。だからこそ、側で私がしっかりと護らないと。
その為にも、結婚なんてせずにこの家に居続けなくちゃならないんだから!
とはいえ、このままでは無理矢理嫁がされてしまう。以前、お母様の葬儀一切を仕切ってくれた商会の会頭から聞いたのだけれど、後見人って実の親と同等の権限を持つらしいの。
そして、貴族の結婚は親が決める事が多い。つまり、後見人が決めた結婚から逃れられない訳。ではこのまま、言いなりになって結婚するか。いいえ、冗談じゃない。出来なくても、やらなくてはいけない時もある。
今やるべきなのは、結婚から逃れる為に何をするべきか。しっかり考えなきゃ。
あれから五日。いい案は浮かばない。このままでは、本当にあの肖像画の爺さんの元へ嫁に出されてしまうわ。
今日も今日とて、ウードと一緒に市場に食材の買い出しに来た。伯爵家なら、出入りの商会から食材を購入するはずなのに。それを止めたのは、当然あの叔父。
しかも、あの叔父はケチで、食費もろくに渡さないときてる! こんな少ない食費で、お腹(なか)いっぱい食べられる訳ないじゃない。切り詰めてやっと何とかしているんだから。
我が家の庭は広いから、端の方で畑を作っている。そこで出来る野菜があるから、今の食費で何とかなっているのよ。それも知らず、メシが不味いの何のと文句ばかり言って!
あんだけ腹にぜい肉が付いてるんだから、少しはダイエットしなさいっての! 私やウードなんて、すっかり腕も足も細くなってしまったんだから。
私はまだいいけれど、ウードの事が心配。この子、同年代の街の子と比べると、随(ずい)分(ぶん)小さいのよ。個人差かなとも思うんだけど、一つ心配な要素があるから。
お母様が亡くなって、すぐに叔父一家がやってきた。それ以来、私もウードもお腹いっぱい食べた事がない。つまり、栄養が足りていないんじゃないか。
成長期の栄養は大事なのに! お肉やお魚を買ってきて調理しても、ほぼ全てあのビヤ樽に入ってしまうのよ! 許せない!
ああ、思い出すだけではらわたが煮えくり返る! 苦肉の策として、こうして買い出しに弟を同行させている。買い食いで、少しはタンパク質を補給させないと。
今日も馴染みの串焼きを売っている露店で買い食いをしていると、隣の果物を扱っている露店の店主が、更に隣の野菜を扱っている露店の店主と話しているのが聞こえた。
「それがよお、娘とその恋人は、二人で駆け落ちしちまったって話だ」
「へえ。そんなに親の決めた結婚が嫌だったのかねえ?」
「まあ、相手が相手だからな。何でも、父親よりも年上の男らしい」
「何だってまた、そんな相手を選んだんだ? そこの親父」
「これ、持ってんだとよ」
「ああ、金かあ」
おや? 何だか、似たような話が耳に飛び込んできたんだけど? 悪いと思いつつ、つい耳をそばだててしまう。
「ついでに言うと、親の方は娘が別の男と好き合ってるのは、知ってたらしいぜ」
「そこの親父も、罪深いねえ」
「まったくだな。おかげで娘はいなくなるし、結婚相手の男からは支度金を返せと迫られてるしで、踏んだり蹴ったりだとよ」
「へましたねえ」
駆け落ち……支度金……。
その時、私の脳裏にあるアイデアが閃(ひらめ)いた。
「ウード、急いで帰りましょう!」
「え? うん」
こうなったら、暢(のん)気(き)に買い物をしている場合じゃないわ。
邸に帰り着いて、その日の夕食はありもので済ませた。叔父一家がギーギー文句を言っていたけれど、全て聞き流す。
さすがに嫁入りを前に暴力を振るうのは憚(はばか)られたのか、彼等からの「折(せっ)檻(かん)」はなかった。
給仕を終え、食器を下げて、洗浄で厨(ちゅう)房(ぼう)ごと食器を綺麗にする。ここからが、私とウードの食事の時間だ。
あの子、お腹空かせているだろうな。小麦粉だけはそれなりの量を確保しているので、それを使って簡単な焼き菓子を作って渡している。
それでも、あんなに細い腕に足……ううん、今はそれを考えている場合じゃない。夕食を持って、部屋に行かなきゃ。
「ウード、お待たせ」
「姉様! ……大丈夫だった?」
「大丈夫よ。心配ばかり掛けてごめんね?」
ウードは、まだ小さいのに私を心配して、気遣ってくれる。抱きしめると、ウードも抱きしめ返してくれた。温かい。
「さ、早く食べちゃいましょ」
「うん!」
食べながらではあるけれど、私はウードにある提案をした。
「ウード、食べながらでいいからよく聞いて。私ね、この家を出ようと思うの」
「え!?」
ああ、驚きすぎて、スプーンを落としちゃった。大丈夫、お姉ちゃんがすぐに綺麗にしてあげるから。
木製の粗末なスプーンだけれど、もう数年使っているから愛着が湧いちゃった。今使っているお皿やボウルもね。
それはともかく、ウードにはこれから選択してもらわなければならない。私が勝手に決めるのは簡単だけれど、ウードももうじき十歳。自分の事は自分で決める、これを覚えなくては。
でも、実際に残るって言われたらどうしよう。いや、きっと私を選んでくれる……はず。
「それでね。ここからが大事な話なの。ウード、あなたは大変でも私と一緒にここを出る? それとも、違う意味で大変だけれどここに残る?」
「姉様と一緒に行く! 置いていかないで!!」
べそをかいて縋(すが)る弟。そうよね。もう、置いていかれたくはないよね。ごめんね、お姉ちゃんが悪かったわ。
「うん……じゃあ、一緒に行こう!」
「うん!」
泣いた烏(からす)がもう笑った。でもいいの。私の天使には、泣き顔は似合わないから。
いや、泣き顔もそれはそれで可愛いんだけど。でも、可哀想の方が強くなるから。やっぱり、弟には笑顔でいて欲しいわ。
翌日の夕暮れ時、家の裏門から外へ出た。私の左手は、小さな弟の手をしっかりと握っている。夕食の支度をせずに出てきたのは、ちょっとした仕返しだ。
「ウード。最後の確認だけれど、本当にいいのね?」
「うん! 僕、姉様と一緒なら、どこでも行くよ!」
健気! まさに天使! 今まで散々苦労してきたのに!! 思わず抱きしめたくなるけれど、今はそんな余裕はないのよ。残念!
でも、後でたっぷり抱きしめるんだからね!
今、私達は王都にある我が家、フェールナー伯爵邸の裏門にいる。ここから出たら、しばらくこの邸には帰ってこられない。家族の思い出が詰まっているここから離れるのは、凄(すご)く寂しいわ。寂しいし、悲しい。でも、行かなくちゃ。
それもこれも、あの叔父一家が悪いんだから!!
思わず溜(ため)息(いき)が口から漏れる。溜息ばかり吐(つ)いていると、幸せが逃げると言ったのは誰だったか。
とはいえ、現状私から逃げ出す幸せなんて、殆(ほとん)どない。
「ちょっと! 洗濯が終わってないわよ!! とっとと終わらせなさい! グズが!」
背後から金切り声が響く。ちらりと振り返ると、厚化粧の女がこちらを睨(にら)んでいた。
「ちょっとお! 私の部屋、掃除がまだなんだけどー? いつまで待たせる訳ー? あれじゃお客の一人も呼べないじゃない。ほーんと、使えないんだから」
厚化粧の女の背後から、ひねた顔の少女がやってくる。この二人、親子なんだけど意地の悪そうな顔がそっくり。
そのそっくり親子は、私を見てにやにや笑っている。私に命令出来るのが、心底嬉しそう。
「おい! 俺の靴が磨いてないぞ! もう出掛ける時間だってのに、何をやっている!」
更に二人の女の後ろから、でっぷりと太った男がやってきてキーキー喚(わめ)いた。
洗濯くらい自分でやれ! それもあんたのは下着じゃないの! 他人に自分のパンツ洗わせていい気になるなんて、どういう育ち方してるのよ!
部屋の掃除も自分でやりなさい! 大体、お客なんて来た事、一回もないくせに! 来客を心配する必要、ないね!
自分の靴は自分で磨きましょう! もっとも、安物だから磨いたところで変わらないけどね!
全て目の前の三人に言いたい。でも、言う訳にいかない。
「わかりました」
口に出すのは、これだけ。私、ストレスでそろそろ倒れそう。
お母様の『気を強く持つのよ』という言葉。あれだけ意味がよくわからなかったのだけれど、今ならわかる。先程の連中の事を言っていたんだわ。
あいつらは、私の父方の叔父(おじ)だという。そんな連中が何故我が家であんなに偉そうにしているかと言えば、叔父が私と弟の「後見人」だから。
親を亡くした貴族の子女は、後見人の手により養育される。後見人は王宮に申請し、許可を得た者しかなれないそう。
これは、お母様の葬(そう)儀(ぎ)を取り仕切ってくれた人が教えてくれた内容。我が家が顧客になっている商会の会頭で、亡き両親とは古馴(な)染(じ)みなんですって。
その王宮に認められた後見人が、叔父……らしい。
『俺がこれからお前達の後見をするカムドンだ。お前達の父親の弟に当たる。俺の言葉にはしっかり従えよ?』
これが、後見人として我が家に初めてやってきた時の、叔父……カムドンの言葉だった。
普通、親を亡くしたばかりの子供に、こんな事言う? そのあまりの酷い態度に、最初は叔父だというのも、後見人だというのも信じられなかった。
騙(だま)されてるんじゃないかと思ったんだけど、会頭が言うには証明書に押された印が本物なので、間違いないそう。これ、偽造すると大変な罪になるんですって。
そこからが、私達にとっての地獄の始まりだったのよね……。
叔父は一家で我が家に乗り込み、まず最初に家中をひっくり返した。金目のものを探していたみたい。
その結果、大したものがなかったと癇(かん)癪(しゃく)を起こし、ウードを蹴ろうとしたのよ!
咄(とっ)嗟(さ)に私が庇(かば)ったから、あの子は怪我をしなかったけれど。
叔父はビヤ樽(だる)のような体をしているから、小さなウードが蹴られたりしたら、怪我では済まなかったかもしれない。あの子、まだ四歳だったのよ?
私も、酷い痛みに意識が飛びそうだったもの。
そして、その後がまた酷かった。あの悪魔、私を裸に剥(む)こうとしたのよ! いきなり私の部屋に入ってきて、やったのがそれ。ど変態め。ロリコン駄目! 絶対!
何とか相手の手を噛んで逃げ出したけれど、あの時は本当に危なかった。思い出しただけで、怖気がふるうわ。
そういえばあの叔父、人をひん剥こうとしてた時、『インショウガーインショウガー』って騒いでいたわね。こっちの世界にも、印象画なんてあるのかしら。
その後も、それなりに残っていた使用人を解雇し、家事は全て私がやる事になった。私、これでも伯爵令嬢ですが?
叔父はどうだから知らないけれど、叔父の妻と娘は自分達より身分が上の私をこき使えるのが楽しかったみたい。あの家、騎士爵家だそうだから。
騎士爵家は貴族の中でも最下位で、一応「爵」と付いてはいるけれど、爵位持ちとしては認められていないらしいの。
多分、そのあたりがコンプレックスなんだと思う。だからといって、私をこき使って、気分次第で蹴ったりものを投げたりしたのは許さないけどね!
前世日本人としての記憶があると、この世界は本当に異世界なんだなと思わされる。
その一つが【魔法】。そしてもう一つが、【異能】。
この二つには明確な区別方法があって、後天的で魔力を消費し、法則に則って事象を変えるものが魔法。先天的で魔力を使わず、法則も何もなく発動するのが異能。
魔法は魔力持ちが法則を勉強し、長年努力を重ねた末に手に入れるもので、異能は生まれつき使える能力……くらいの認識でいいと思う。
そして私は、この異能を持っている。ただし、戦闘には一切使えないもので、【洗浄】と【治癒】というもの。
この異能、私が前世の記憶を完全に取り戻した頃に使えるようになった。もしかしたら、そのあたりが関係しているのかも。
でも、どうせ異能を授かるのなら、攻撃系の力が欲しかったわ。そうすれば、今頃あの悪魔な叔父一家は……いいえ、これ以上はいけない。
ともかく、異能を使えるようになったのはまだ幼い頃で、当然親には話しておいた。お母様、とても驚いてらしたっけ。
その後、誰にも言わないようにって、きつく口止めされた。異能は、魔法と違って持っている人が少ないから、身の危険があるんですって。ショボい異能だと思うんだけれど。
そのショボい異能は、実生活ではなかなか役に立っている。
洗浄はその名の通り、掃除や洗濯に使えて、ちょっと範囲を意識して異能を発動させれば、どんな頑固な汚れでもたちまちのうちに消えてしまう能力。
治癒の方は、魔法の治癒には遠く及ばないけれど、ちょっとした怪我などを治せる。あと、怪我と痛みを分けて消せるのも、便利なところかな。
ただし、病気は治せない。だって、お母様を治せなかったから。寝付くようになってから、何度か治癒を試してみたんだけれど、効果はまったくなかった。
お母様は怒る事も落胆する事もなく、『ありがとう』と微笑んでくれたけれど。私の異能が、もっと強かったら、お母様を救えたのかもしれない。
そうすれば、幼いウードは母親を亡くさずに済んだ。もちろん、私だってお母様に側に居ていただきたかったわ。今を考えると、余計にね。
ともかく、この二つの異能により、叔父一家からの嫌がらせや体罰なんかは何とかなっている。あ、あと前世の記憶も。
これのおかげで、病まずに済んでると思うんだ。まさか、今の状況があるのをわかって、前世の記憶を持ったまま転生した訳じゃないわよね?
ともかく、私は弟が我が家を継ぐその日まで、弟を護り抜く! お母様にも約束したんだもの。頑張らなきゃ。
私の十六歳の誕生日を四カ月後に控えたある日、いつものように掃除をしていると、叔父に呼び出しを受けた。
場所は、叔父が勝手に占拠した、亡きお父様の部屋。何我が物顔で使っているんだか。
ここには、お父様との思い出が詰まっているのに!
この部屋の大きな椅子に座るお父様の膝に乗って、よく本を読んでもらっていた。この国、子供向けの絵本があるのよ。
大好きな絵本を、大好きなお父様の膝で読むのは、私の楽しみだったのに。
そのお父様の部屋は、今やビヤ樽に占拠されてしまっている……本当、腹立たしいったら!
そんな感情は表に出さず、無表情を貫く。これも、叔父達が気に入らない点だそうだけど、構うものですか。
私が笑顔を見せるのは、ウードにだけなのよ!
「やっと来たか。遅いではないか」
それはあなた達が酷く汚した服を洗濯していたからですよ。まったく、下着まであんなに汚すなんて、どういう使い方をしているのかしら。異能を使うから洗濯は一瞬だけど、数が多くて。
でも、口には出さない。私の様子に、叔父は鼻を鳴らした。
「ふん! 相変わらず可愛げのない娘だ。まあいい。喜べ、お前の結婚が決まったぞ」
「は?」
さすがに、声が出てしまったわよ。この男、今結婚って言った?
訝(いぶか)しむ私に、叔父は嬉(き)々(き)として話し出す。
「トンスガン男爵様が、お前の事を嫁に欲しいそうだ。いい話だろう?」
にやにやと下(げ)卑(び)た顔で笑う叔父を見るだけで、この話が決して『いい話』ではない事がわかる。バレバレなのよ。
叔父の妻が、叔父とよく似た笑い方で、小さめの肖像画を出してきた。そこには、目の前の叔父よりも年が上の、とても貴族に見えない老人が描かれていた。
え……まさか、これが結婚相手だって言うの?
「式はお前の十六歳の誕生日当日だ。それまで、せいぜい身を清めておくのだな!」
ゲラゲラと笑う叔父夫婦から部屋を追い出され、廊下で呆(ぼう)然(ぜん)としていたら、叔父の娘がやってきた。
「こんなところで何をしてんのよ。とっとと仕事に戻って……ああ。あんた、あの話を聞いたんだ?」
娘は、こちらを見て両親そっくりの、下卑た笑みを浮かべる。
「あの爺(じい)さん、若い娘が好きな事で有名なんですってねえ。でも、伯爵家の娘ではあっても、今は使用人同然のあんたみたいな女を嫁に望んでくれるのなんて、あの爺さんくらいでしょうよ! せいぜいお父様に感謝して嫁ぎなさいな」
ゲラゲラ笑う娘は、そのまま廊下の向こうへ消えていく。
どうして、今、私は彼等をこの世界から消す力を持っていないのかしら。今だけは、洗浄と治癒でなく、消去とか暗黒なんちゃらって力が欲しいわ。
廊下で拳を握りしめていたら、背後から声が掛かった。
「姉様? どうしたの?」
「ウード」
ああ、先程までの黒い何かが洗い浄められていく……やだ、うちの弟ってば、そんな能力を持っていたの?
それはともかく、不安そうな弟を安心させなきゃ。
「何でもないわ。行きましょう、ウード」
「本当? 本当に何でもない? また、あの人達に虐(いじ)められてない?」
もう! 本当にうちの弟は何て優しいの! 天使! マジ天使!
「大丈夫よ。私が強い事は、ウードも知っているでしょう? 心配しないで」
「……うん」
むー。これは誤魔化せてはいないな。ウードは年の割に利発な子だから。でも、これ以上は言えないし。
まさか、無理矢理嫁がされそうになっている……なんてね。余計心配掛けちゃう。
私達の部屋は、使用人用の半地下にある。おかげで冬は寒いし夏はジメジメして不快指数が高い。
今日の仕事を全て終え、寝間着に着替えてベッドに入る。この固くて狭いベッドも、六年近く使ってれば慣れるものね。
昼間の、叔父達の話を思い出す。こんな時期に結婚の話を持ってきた裏は、もうわかっている。
私が、十六歳になるから。ここ、セネリア王国では、満十六歳で成人する。そして、これが一番大きいんだけど、成人になれば、後見人がいらなくなる。
叔父一家が我が家で大きな顔をしていられるのも、後見人という立場があればこそ。でも、貴族家に一人でも成人がいれば、後見人は必要ない。
我が家で言えば、私がウードの後見人という立場に自動的になるので、あの子が成人して伯爵位を継ぐまで、この家で見守れるって訳。
叔父は、それを阻止したいのだろう。
それにしても、財政状況が悪い我が家の後見人なんて、いつまでもやっていたいものかしら? そこだけは不思議なのよねえ。
とはいえ、今考えるべきは弟の事! 何としても、フェールナー伯爵位を弟に継がせなくては!
私が家を出されたら、あの叔父一家の事だもの。これ幸いとウードを使って伯爵家を乗っ取りかねないわ。だからこそ、側で私がしっかりと護らないと。
その為にも、結婚なんてせずにこの家に居続けなくちゃならないんだから!
とはいえ、このままでは無理矢理嫁がされてしまう。以前、お母様の葬儀一切を仕切ってくれた商会の会頭から聞いたのだけれど、後見人って実の親と同等の権限を持つらしいの。
そして、貴族の結婚は親が決める事が多い。つまり、後見人が決めた結婚から逃れられない訳。ではこのまま、言いなりになって結婚するか。いいえ、冗談じゃない。出来なくても、やらなくてはいけない時もある。
今やるべきなのは、結婚から逃れる為に何をするべきか。しっかり考えなきゃ。
あれから五日。いい案は浮かばない。このままでは、本当にあの肖像画の爺さんの元へ嫁に出されてしまうわ。
今日も今日とて、ウードと一緒に市場に食材の買い出しに来た。伯爵家なら、出入りの商会から食材を購入するはずなのに。それを止めたのは、当然あの叔父。
しかも、あの叔父はケチで、食費もろくに渡さないときてる! こんな少ない食費で、お腹(なか)いっぱい食べられる訳ないじゃない。切り詰めてやっと何とかしているんだから。
我が家の庭は広いから、端の方で畑を作っている。そこで出来る野菜があるから、今の食費で何とかなっているのよ。それも知らず、メシが不味いの何のと文句ばかり言って!
あんだけ腹にぜい肉が付いてるんだから、少しはダイエットしなさいっての! 私やウードなんて、すっかり腕も足も細くなってしまったんだから。
私はまだいいけれど、ウードの事が心配。この子、同年代の街の子と比べると、随(ずい)分(ぶん)小さいのよ。個人差かなとも思うんだけど、一つ心配な要素があるから。
お母様が亡くなって、すぐに叔父一家がやってきた。それ以来、私もウードもお腹いっぱい食べた事がない。つまり、栄養が足りていないんじゃないか。
成長期の栄養は大事なのに! お肉やお魚を買ってきて調理しても、ほぼ全てあのビヤ樽に入ってしまうのよ! 許せない!
ああ、思い出すだけではらわたが煮えくり返る! 苦肉の策として、こうして買い出しに弟を同行させている。買い食いで、少しはタンパク質を補給させないと。
今日も馴染みの串焼きを売っている露店で買い食いをしていると、隣の果物を扱っている露店の店主が、更に隣の野菜を扱っている露店の店主と話しているのが聞こえた。
「それがよお、娘とその恋人は、二人で駆け落ちしちまったって話だ」
「へえ。そんなに親の決めた結婚が嫌だったのかねえ?」
「まあ、相手が相手だからな。何でも、父親よりも年上の男らしい」
「何だってまた、そんな相手を選んだんだ? そこの親父」
「これ、持ってんだとよ」
「ああ、金かあ」
おや? 何だか、似たような話が耳に飛び込んできたんだけど? 悪いと思いつつ、つい耳をそばだててしまう。
「ついでに言うと、親の方は娘が別の男と好き合ってるのは、知ってたらしいぜ」
「そこの親父も、罪深いねえ」
「まったくだな。おかげで娘はいなくなるし、結婚相手の男からは支度金を返せと迫られてるしで、踏んだり蹴ったりだとよ」
「へましたねえ」
駆け落ち……支度金……。
その時、私の脳裏にあるアイデアが閃(ひらめ)いた。
「ウード、急いで帰りましょう!」
「え? うん」
こうなったら、暢(のん)気(き)に買い物をしている場合じゃないわ。
邸に帰り着いて、その日の夕食はありもので済ませた。叔父一家がギーギー文句を言っていたけれど、全て聞き流す。
さすがに嫁入りを前に暴力を振るうのは憚(はばか)られたのか、彼等からの「折(せっ)檻(かん)」はなかった。
給仕を終え、食器を下げて、洗浄で厨(ちゅう)房(ぼう)ごと食器を綺麗にする。ここからが、私とウードの食事の時間だ。
あの子、お腹空かせているだろうな。小麦粉だけはそれなりの量を確保しているので、それを使って簡単な焼き菓子を作って渡している。
それでも、あんなに細い腕に足……ううん、今はそれを考えている場合じゃない。夕食を持って、部屋に行かなきゃ。
「ウード、お待たせ」
「姉様! ……大丈夫だった?」
「大丈夫よ。心配ばかり掛けてごめんね?」
ウードは、まだ小さいのに私を心配して、気遣ってくれる。抱きしめると、ウードも抱きしめ返してくれた。温かい。
「さ、早く食べちゃいましょ」
「うん!」
食べながらではあるけれど、私はウードにある提案をした。
「ウード、食べながらでいいからよく聞いて。私ね、この家を出ようと思うの」
「え!?」
ああ、驚きすぎて、スプーンを落としちゃった。大丈夫、お姉ちゃんがすぐに綺麗にしてあげるから。
木製の粗末なスプーンだけれど、もう数年使っているから愛着が湧いちゃった。今使っているお皿やボウルもね。
それはともかく、ウードにはこれから選択してもらわなければならない。私が勝手に決めるのは簡単だけれど、ウードももうじき十歳。自分の事は自分で決める、これを覚えなくては。
でも、実際に残るって言われたらどうしよう。いや、きっと私を選んでくれる……はず。
「それでね。ここからが大事な話なの。ウード、あなたは大変でも私と一緒にここを出る? それとも、違う意味で大変だけれどここに残る?」
「姉様と一緒に行く! 置いていかないで!!」
べそをかいて縋(すが)る弟。そうよね。もう、置いていかれたくはないよね。ごめんね、お姉ちゃんが悪かったわ。
「うん……じゃあ、一緒に行こう!」
「うん!」
泣いた烏(からす)がもう笑った。でもいいの。私の天使には、泣き顔は似合わないから。
いや、泣き顔もそれはそれで可愛いんだけど。でも、可哀想の方が強くなるから。やっぱり、弟には笑顔でいて欲しいわ。
翌日の夕暮れ時、家の裏門から外へ出た。私の左手は、小さな弟の手をしっかりと握っている。夕食の支度をせずに出てきたのは、ちょっとした仕返しだ。
「ウード。最後の確認だけれど、本当にいいのね?」
「うん! 僕、姉様と一緒なら、どこでも行くよ!」
健気! まさに天使! 今まで散々苦労してきたのに!! 思わず抱きしめたくなるけれど、今はそんな余裕はないのよ。残念!
でも、後でたっぷり抱きしめるんだからね!
今、私達は王都にある我が家、フェールナー伯爵邸の裏門にいる。ここから出たら、しばらくこの邸には帰ってこられない。家族の思い出が詰まっているここから離れるのは、凄(すご)く寂しいわ。寂しいし、悲しい。でも、行かなくちゃ。
それもこれも、あの叔父一家が悪いんだから!!