甘えたがりの君に恋をする。


今朝はずいぶんと冷え込んでいる。


11月に入って、一週間ほど経つ今日。刻一刻と冬が近づいてきていることを悟った。


少しだけかじかんだ手に、はあっと息をふきかける。これで手が温かくなったのかは、正直あまり分からない。それでも息をふきかけるのは、寒いときにやる癖だからだろう。


肩に提げたカバンを、もう一度ぎゅっとにぎる。


廊下の窓から見える景色を、何となくを見渡してみても、特に目立つような大きな建物はない。


ここは田舎の町。
私が住んでいるのは、町の中でも人口が密集しているところなので、生活に支障はほとんどないのだけれど。


……でも、なんだか寂しい。


もうちょっと、心を満たす何かがほしい。
いや、違うな。心を満たすものは、確かに存在する。


しばらく見つめていた窓の外から踵を返し、私は再び教室へ向かって廊下を歩き始めた。


少しだけ歩いて、2年3組と書かれた標識のあるドアの前にたどり着いた。


ガラガラッ


ドアをスライドさせて、教室に足を踏み入れる。ドアを閉めると、さっきまでの静けさはなくなっていき、一気に喧騒に包まれた。


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