闇夜と夜明けの狭間で恋をする。
愛の定義
ああ、もう。
あなたの全部が可愛い。全てが尊い。
そんな想いを胸に秘めながら、私は手にテニスラケットを持った彼が、淡々とラリーを続けていくのを見ていた。
その様子を見ながら、私は手に持っているお弁当箱を、ぎゅっと両手で握りしめる。
「やっぱり、気になる?」
「うーん……。まあ、そう、だね」
私の視線の先に気づいたのか、隣に立っている綾音がふっと頬を緩めて私に聞いた。
彼を見つめてしまっているのは、もうほとんど無意識的にだ。
これが俗に言う〝気になる〟という感情なのかもしれないけれど、正直しっくりこなかったので、言葉を濁して綾音に伝える。
そんな受け答えをしながら、私たちはまだ誰も座っていないベンチに向かって歩き出した。
さくさく、と足を踏み出せば踏み出すほどに鳴る、草原の音が心地よい。
2人そろってベンチに腰をかけると、さっきよりも見やすい位置に彼の姿が見えた。
ここは中庭。
中庭と言っても、中庭と校庭は直結しているので、運動部が活動している様子がよく見えるのだ。
「じゃあ、ご飯食べよ」
「……うんっ」
膝の上にお弁当箱を広げ、手を合わせて、いただきます、と私は小さく口にした。その直後、綾音の「いただきます」と言った声が聞こえてきた。