闇夜と夜明けの狭間で恋をする。
でも、綾音の言葉にはもちろん同感で。
「ね、私もびっくりしてる。
私、まだ今日なにも食べてないからお腹ぺこぺこ……。早くお店に入りたい……」
「えっ、私も! なあんだ、莉子もだったんだ」
私だけ気合い入ってるのかもって心配したよ、と綾音は安心したように笑った。
何言ってるの。
もうかれこれ1年くらい、私はここに来てみたいと思ってたんだから!
気合い入ってるに決まってるじゃない。
そもそもこの街に行くことすらも珍しいうえ、行くとしても必ず午後になってしまっていた。
だから、いつも混みあっているツキノカフェには、入ろうとも入ることができなかったのだ。
とうとう、このカフェに来ることができたんだと、まだ順番待ちをしている最中なのに、私のテンションは爆上がりである。
昨日電話があってから、今日を楽しみにしていたのは私だけではないらしい。
綾音もだったんだ。
その事実にも嬉しくなって、頬が緩んでしまう。
そんなこんなで、ドキドキしながら待つこと数分。
「2名様でお待ちの日野様、いらっしゃいますか?」
今日、ウェイティングボードには綾音の名字を書いた。
日野様ってことは……、私たちだ!
「はい!」
綾音が目を輝かせながら、返事をする。
そしてその後ろを、私は歩いて着いていく。