闇夜と夜明けの狭間で恋をする。
だから。
「さっ、注文しよっ!」
「えっ、莉子、本当にいいの?」
「もちろん。私、ケーキも大好きだし」
「ありがとう〜、莉子!」
綾音とそんな会話を交わしながら、私はベルボタンを押す。
ピンポーン、と店内に響き渡る音がしてから数十秒後。
私たちが座っているテーブルに、1人の丸メガネをかけた店員さんが現れる。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
その店員さんの第一印象は、整った顔をしている人だなぁ、というものだった。
一言で表すなら、〝爽やか〟というような感じ。
声が凛としていて、よく通っている。
ん……?
この人、どこかで見たことがあるような……。
気のせい、かな。
なんて思いながら、綾音の方を見やる。
「えっ、綾音……!?」
綾音は、見たことがないほど顔を真っ赤にして、その店員さんを見つめていた。
えっ、えっ?
何が起きてるの……っ?
「綾音……?」
私の声に、はっとしたように私の方を見る綾音。
それから、焦ったように口を開いて。
「いや、な、なんでもないのっ! ごめんね、注文しよっか」
「そ、そう……? 無理はしないでね?」
「うん、大丈夫!」
綾音は私に、ニコリとほほえんだ後、「すみません」と店員さんに頭を下げた。
それから、手元にあるメニュー表を見ながら、注文を始めた。