闇夜と夜明けの狭間で恋をする。
私がお弁当箱の蓋をあけるなり、綾音は私のお弁当の中身をのぞきこんできて。
「わあっ、莉子のお弁当の玉子焼きおいしそうっ! 一個ほしい!」
と、目を輝かせて言った。
そんなにおいしそうに見えるかな、なんて思いつつ、私はうなずく。
「もちろん。どうぞ」
「ありがとうー、莉子!」
心の底から嬉しそうな顔をしてくれる綾音のお弁当箱に、ひょいと玉子焼きをいれた。
それから、綾音は我先にとでも言うように私の玉子焼きをぱくっと食べた。
どうかな。綾音、おいしいって言ってくれるかな。
なんて思いながら、綾音が玉子焼きを頬張る姿を見ていた。
すると、綾音は「んんっ!」と目を輝かせて。
「美味しいっ!やっぱり莉子の料理が一番だわ」
と、私を見て伝えてくれた。
「本当? よかった」
実は、このお弁当は私が作っている。
お母さんとお父さんは、どちらも朝早くから夜遅くまで仕事をしているので、ご飯を作るのは私の役目なのだ。
自分の料理をおいしいって言ってもらえるのは、きっと誰でも嬉しいはず。
うんうん、きっとそうだよ。
なんてひとりで納得しながら、お弁当の中に詰め込んだふりかけご飯を、黙々と食べ進める。
そして、テニスコートにもう一度視線を戻した。
来週には大きな大会を控えているから、昼休みも自主練してる、って誰かが言ってたっけ。