闇夜と夜明けの狭間で恋をする。


彼はダブルスを組んで練習に取り組んでいるらしい。


体はそんなに大きくないのにー160cm前半だと聞いたことがあるーどんなボールでも打ち返してしまうからすごい。


とにかく目を奪われてしまって、私は箸を進めながらも、彼から目を離せなくなる。


と、そのとき。


パコーン!


テニスコートから、ひときわ大きな音が響いた。


相手チームは高く弧を描くボールを目で追いかけるので必死で、目を少し見開いていたのが分かる。


そのくらい、速くて強いボールだった。


もちろん、相手チームはそのボールを打ち返すことができず、コート内にボールはそのまま落下して行った。


今のは……彼が打ったボールだ。


彼が打ったボールを機に、0ー0から1ー0に変わった。


「瑠歌、ナイッシュー!!」


と、ダブルスを組んでいた男の子に彼は声をかけられると、心底嬉しそうに笑った。


「ありがとうー!」


満面の可愛らしい笑みで、彼らはハイタッチを交わした。


「わ、す、すご……」


彼の動作の一部始終を見ていた私は、思わず声をもらしてしまう。


浅野 瑠歌(あさの るか)


彼の名前。


男の子のわりには小柄で可愛くて、甘えるのが上手で。


だけど、運動神経は抜群。その姿は、とてもかっこいい。


そんな彼の可愛さに、ギャップに、溺れる人はきっと少なくないだろう。


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