闇夜と夜明けの狭間で恋をする。


「べ、別に惚れたとかじゃなくて……!」

「えー、そうなのー?」

「そうだよ! だって、浅野くんは私の推しってだけで……! そういう変な意味じゃなくて……」


そう、浅野くんはあくまで私の推し。


確かに、浅野くんのことを見るとドキドキする。


胸が高鳴る。


話してみたいなぁって思う。


これが、俗にいう〝恋〟というものなのかもしれないと、本当は分かっている。


だけど、この感情を〝恋〟と名付けていいか、と考えると、どうしても自信が持てなくなるのだ。


だって、〝恋〟って言うのは〝その人を愛している〟という意味でしょう?


そこで、一つの疑問を私は抱いてしまう。


……〝愛〟とはなんだろう。


自分が大切にしたい人たちを、心から想うことを愛と呼ぶの?


それとも、自分がたった一人の大切にしたい人を、心から想うことを愛と呼ぶの?


それとも、もっともっと違うこと?


見知らぬ誰かにも愛という感情を抱くの?


自分のことを深く想ってくれている人に対する感情を愛と呼ぶの?


考え出したら止まらない。


〝愛〟の定義が分からない。


〝愛〟そのものが分からない。


だから、浅野くんに恋をしている、という言葉じゃ納得できない。


だって、愛しているのか分からないんだもの。

< 5 / 20 >

この作品をシェア

pagetop