甘えたがりの君に恋をする。
前の席からそんな声がして、ぱっと顔を上げる。
そこにいたのは、私の反応を楽しんでいるような表情の綾音だった。
「……、いや、推し活っていうかっ」
「推し活でしょー! で、今日は浅野、何をしてたんだって?」
「……浅野くん、森野くんにバックハグしてた……っ」
「わあーっ、尊!!」
綾音の質問にどぎまぎしながら答える。
自分が〝浅野くん〟と名前を呼んでいることが、私の鼓動を速めるきっかけになってしまう。
「やっぱ浅野 瑠歌、いいよねぇ……」
頬杖をつきながら、綾音がどこか上の空で言った。
浅野くんを推しているのは、私だけじゃないらしい。そりゃ、あの可愛さをもつ彼だ、女子からの人気は高いらしい。
そして綾音も、浅野くんのことを良いと思っている。だから、こんな私の話にも、耳を傾けてくれるのだ。
最近、浅野くんが廊下を通るたびに、他クラスの女の子の話し声が聞こえてきたりして、少しだけもやもやすることもある。……秘密だけれど。
「浅野のファンってさ、たくさんいるけど」
綾音は小さく笑った。
「ここまで浅野に振り回されてる人初めてみたなー」