甘えたがりの君に恋をする。
「ちょ、綾音っ」
「あの夏夜がクラス内に推しをつくるなんて……」
しみじみと何かを感じるように、そうつぶやく綾音。綾音の言葉に、私も心の中でうなずいた。
本当にそう。
私だって、こんなになるとは思ってなかったよ。
今まで「好き」ってどういう感情かよく分からなかったけれど、浅野くんを通して少し分かったような気がする。
でも、浅野くんはあくまで〝推し〟なわけで。恋愛感情は未だによく分からない。
ちらりと浅野くんの方を見る。もう森野くんからは離れていたけれど、まだ可愛らしい笑顔を浮かべて、森野くんたちと話していた。
浅野くんは身長が160cm前半だと聞いたことがある。そんな小柄な身長だから、いつも誰かを見上げているのもまた可愛いと私は思っている。
ちなみに私は151cm。あまり触れたくないけれど、身長は低いほうだ。
「そう、だね」
「夏夜が2年生になってすぐに、浅野が推しかも、なんて言い出したときはびっくりしたけどね」
「うっ……」
実は、最初の席では〝三村〟と〝森野〟で席が前後だった。
森野くんと仲がいい浅野くんは、よく森野くんのところに遊びに来ていて。それをきっかけで浅野くんが推しになったのだ。