甘えたがりの君に恋をする。


「私はいいと思うよー? なんて言うか……、推しって生き甲斐みたいなものだし」

「生き甲斐?」

「ほら、アイドルとか推している人とかはさ、その人の活動を応援することで生き甲斐を感じたりするんだよ」

「そうなんだ……」

「うん。中には、推しの存在そのものが生き甲斐になっている人もいるみたい」


存在そのものが生き甲斐、か。


なんだか少し難しい気がする。私に置きかえて見ると、浅野くんの存在そのものが生き甲斐、ということになる。


浅野くんがきっかけをくれて、知らない感情に出会えたのは確か。でもそれを〝生き甲斐〟と呼べるのかどうかは、正直よく分からない。


私の生き甲斐って、なんだろう。


浅野くんのことはもちろん好ましく思っている。だけど、それは俗に言う〝愛〟とはまた違うのではないか。


〝愛〟もまた難しい。


大切にしたい人たちをを心の底から想うことを愛と呼ぶのか、たった一人の特別な人を心の底から想うことを愛と呼ぶのか。


私にはさっぱり分からない。


もし前者だとしたら、私は愛に出会えているかもしれないけれど、後者だとしたら、私はきっと〝愛〟をまだ知らない。


考えだしたら、分からないことや曖昧なことばかり浮かんで、頭の中の収拾がつかなくなってしまった。

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