闇夜と夜明けの狭間で恋をする。
「ん? 感謝されるようなこと何もしてないよ?」
綾音の言葉がほんのり嬉しくて、感謝の言葉を伝えるけれど、綾音は当然だというようにさらりとかわしてしまう。
誰かに優しくするのは当然だ、というような綾音の姿はとても尊敬する。
綾音は決まってそうだ。
自分が優しいことをしたからと言って、見返りを求めたりはしない。
だけどそれだけじゃない。
誰かに優しくすることを当たり前だと思っているから、それが〝親切心〟だと誇っているわけでもないのだ。
そんな綾音に、私は惹かれた。
だから今、私は綾音の一番の友達としてそばにいる。
……綾音も、そう思ってくれていたらいいな。
「ごちそうさまー!」
そんなことを考えていると、綾音がぱちんと手を合わせたのが聞こえた。
えっ。
もう食べ終わったの!? 早くない?
今純粋に思った疑問をそのまま口に出すと、綾音は不思議そうにふるふると首を横に振った。
「え? むしろいつもより遅い方だと思うんだけど……」
「嘘! 待って、今何時!?」
「1時20分だね」
1時20分?
5限目が始まるのは、1時30分からだ。
……あと10分しかない。
「わわっ、急がなきゃ!」
目を落とすと、そこには残り三分の一ほどのお弁当。
あれ、私こんなに食べてなかったんだっけ!?