甘えたがりの君に恋をする。


ええい、今はもう考えるのをやめてしまおう。いつかきっと、答えがでる日が来るはずだから。


来るはず、だから。


「……生き甲斐って難しいね」


と何気なくつぶやくと、綾音はおどろいたように小首を傾げた。


「そう? 私、すごく好きなアイドルグループとかいるけど」


そこで綾音は幸せそうな笑みを浮かべて。


「その人たちの活動を応援することとかが、生き甲斐とか、生きる意味になってたりするかな」

「……そっかぁ」


これ以上ないくらいに幸せそうにする綾音。もしかしたら、幸せと生き甲斐は紙一重なのかもしれない、とも思った。


綾音のそんな表情を見ていたら、何も言えなくなって、私は口をつぐんだ。


綾音とは、幼いときからの友達だ。いわゆる、幼なじみ。


だから、綾音は私のことをよく分かっている。私が今まで、異性に興味をもつことがなかったことも、ほとんど全部。


私は今までも、今も恋愛をしていない。それもあって、〝愛〟というものがよく分からないのだ。それなのに、生き甲斐だとか、そんな言葉は今の私には難しすぎる。


ちなみに綾音とは、今年、久しぶりにクラスが一緒になった。小中高、なんなら幼稚園まで私たちは一緒で。昼休みなどの長い休み時間に、お互いのクラスを訪ねるのは、もはや習慣化していた。


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