オレンジのヒーローは永遠の愛を誓う
 救助する側の人間が巻き込まれたら元も子もない。

 後部座席に乗っていた子供と女性を救急車に乗せた。あとは救急隊員に任せる。

「あとは運転手だな。どうだ?」
「あと少し」

 運転手を傷つけないように、そして二次被害が起きないように、繊細な作業が続いた。

「出ました!」

 運転席から助け出された男性を見て、俺は言葉を失う。原田雄二……

 ひまりの父親だ。と言うことは、後部座席の二人が妻と息子……

 複雑だが、私情を挟むわけにはいかない。救急車で運ばれるまで見送って、現場の処理に戻った。

 ひまりにとって良き父ではないが、守るべき家族がある。後日改めて話し合いをするつもりだ。

 もう二度とひまりに近づかないように――

 作業は夜中まで掛かり、仮眠ができないまま朝を迎える。

 書類を作成していたら消防署を出たのが昼前になり、帰宅してそのまま眠ってしまった。

◇◇◇

 マンションの玄関扉を開けると、室内は真っ暗で人の気配がない。

 電気をつけると玄関には凛太郎さんの靴があった。
 

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