オレンジのヒーローは永遠の愛を誓う
 五階に住む私は、仕事帰りの疲れた身体で階段を上りながら母のことを思い出していた。辛いこともあったけど、それ以上に楽しい思い出で溢れている。きっと母は天国から保育士として働く私を見て、喜んでくれているはずだ。

「ふふっ」と昔を思い出して笑いが漏れてしまう。
 
 子供の頃は五階まで上るのが辛くて、何度文句を言ったことか……

 そのたびに、母とじゃんけんをして『グリコ』をした。そして、五階まで上がりきると高台に建つこの建物からの景色が最高で、疲れを忘れたものだ。

 夜はネオンが輝き、朝日や夕日も楽しめる。

 なぜか今日はいつも以上に母のことを思い出し、懐かしい気持ちになった。仕事であった嫌なことを忘れるかのように、早めに就寝する。

「んっ?」

 ぐっすりと眠っていた私は、焦げ臭いにおいで目が覚めた。窓の外は真っ暗で、まだ夜中だということが理解できる。

 何度も大きく息を吸い込み確認するも、やはり何かが焼け焦げたにおいがした。

 耳を澄ませても辺りは静まり返っている。疑問は残るものの、寝不足で仕事へ行くわけにもいかないので、再び眠りに就こうとした時だった。

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