オレンジのヒーローは永遠の愛を誓う
 幼稚園が見えてくると、少し休んだだけなのに懐かしく感じる。

 先生達にも園児達にも迷惑を掛けてしまった。

「おはようございます!」
「「「ひまりちゃん!」」」

 先生達の視線が一斉に集まる。

「この度はご迷惑をお掛けしました」
「何を言ってるの。災難だったわね。もう大丈夫なの?」
「はい! すっかり元気です」
「みんな心配してたのよ」
「ありがとうございます」
「元気ならいいのよ。本当に大丈夫なのよね?」
「はい」

 私の母が亡くなったことも、身寄りがないことも知っているので、きっと聞きたいことがたくさんあるはずなのに、敢えて聞かないでくれているのだとわかる。大丈夫なのよね? の言葉に全てが詰まっているのだ。

「何かあったら頼ってちょうだい」
「はい」

 そろそろ準備を始めないと、子供達が登園する時間になる。職員室を出て保育室へと向かった。

 久しぶりの教室は、私がいない間も綺麗に掃除されている。きっと美里先生が代わりを務めてくれていたに違いない。

 教室に貼られた消防署の絵が懐かしく感じた。


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