オレンジのヒーローは永遠の愛を誓う
 エントランスを見ると、あの日の彼女を思い出した。でも、今は隣に凛太郎さんがいる。

 エレベーターで20階に降りると、一直線に最奥の部屋を目指す。鍵を開けて玄関に入ったところで、私は凛太郎さんに抱きしめられていた。

「会いたかった……」
「私も……」

 素直な気持ちが無意識に口から漏れる。

「ひまり、今の言葉もう一回言ってくれないか?」
「……私も凛太郎さんに会いたかった……」

 離れている間にさらに気持ちが大きく育っていた。凛太郎さんに会いたくて、でも会えなくて――

 ずっと一緒にいられるという保証はないのだ。伝えられる時に伝えないと後悔することになる。

「俺も会いたかった。ひまり好きだ。いや愛してる」
「私も」

 凛太郎さんの腕の中からそっと見上げると、目と目がしっかりと交わった。

「キスしていい?」

 私にとってのファーストキス――

 その相手は凛太郎さん以外に考えられない。だから頷いて、そっと目を閉じた。

 優しく合わさった柔らかい感触。触れるだけのキス――


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