君がいなけりゃ、意味がない

7







「……先輩。ラリーになりませんよ、これじゃ」


「だって。これ以上、腕振れないよ。
明後日、マウス待てなくなる」


「どんなけ貧弱なんすか」


「えーん」


「はい、ラケット持って。まだまだ動き足りんっすよ」


「だったらさあ。
もっと上級の人とやればいいじゃん。
見てよ、向こう。すっごい熱い試合してるよ」


「そしたら先輩ぼっちやん」


「いいえ。
私は、あっちの初心者グループに入れてもらう」


「無理。先輩が他の人とペアになるなんて許せない」


「鬼!」


「こんだけ言うてもあかんとか、鬼はどっちやねん」


「ねぇ………休憩……しよ?」


「…………コッワ。無自覚でそれ、まじコワ」


「一丁前にスポドリ買ってくる。要る?」


「俺も行く」


「あ、そーいえば。さっきさぁ、
『神崎くんと仲良いよね』って言われた」


「え、まじで。誰に?」


三島(みしま)くん」


「待って?
男に言われたなら、話変わってくるんやけど」


「なんか『他人が入りにくい、2人だけの世界がある』って」


「おー。ようわかっとるやん」


「そんなんじゃ、ないのにね」


「わかってないの、この人だけやったわ」


「でも、ほんとさー。
最初会った時は、こんな普通に話せる日が来るなんて思ってなかったよ」


「うわ、嫌な話しそう」


「あは。『新人担当降りろ』的なこと言われたよね。私」


「……やっぱな。
思い出さんといて、そんなこと」


「丸くなったよ、神崎くん」


「ほんまに反省してるんやって。
若気の至り。調子乗ってたの」


「ありがたかったけどね。はっきり指摘してくれて」


「……先輩がお人好しで良かったですわ」


「やっぱ、ストレートの方がいいよね。
言いたいことがあるならさ」


「痛った。……ほんまは全部わかって言ってんちゃうの?」


「え、ケガ?大丈夫?」


「うん。ケガした。外傷なく、身体内部中央の損傷のみ」


「何したらそんなことになるの?薬局探す?」


「いや、ええです。どうせ()らんし」


「……んで、そのままサボっちゃう?とかね」


「うわぁ……軽率に行こかな……」





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