君がいなけりゃ、意味がない

7'



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「おは……って。なに、この独特な香り」


「…………おはよう」


「あぁ……先輩の湿布か」


「見てほら。手、震えるの」


「良かったですね。筋肉痛、早よ来て」


「……そんなこと心配してなかったよ」


「来月はもっと、先輩に易しいイベントやといいですね」


「あ。もうお知らせ来てたよ。なんだと思う?来月」


「あ、10月か。
それやったら、ハロウィンしかないでしょ。
メイド服一択ね」


「需要あるのかなぁ……神崎くんのメイド服」


「なんで俺やねん」


「そしてハロウィンでもない、と」


「えぇ。じゃあ何すんの?」


「『[秋祭り]に参加しよう』だって」


「……それ、会社のイベントとして行く必要あんの?
社外の祭りでしょ?」


「よくわかんないけど……
イベント実行委員のお子さんが主催って書いてる」


「ほな普通に客寄せやん」


「秋祭りって、何するの?」


「うーん。地域とかによって、ちゃうんやないかなぁ。
関西おったとき、よう行ってたよ。"けんか"や"だんじり"。熱量が最っ高やった」


「ほほぉ。楽しみ。
あ、"よさこい"って書いてた」


「えー!めっちゃいいやん。
あの一体感、たまらんよなぁ」


「私はじめてみる。わくわく」


「はしゃぎすぎて、迷子になるんだけはヤメテくださいね」


「てか。別に、私とばっかり居る必要ないんだよ?
だから次回は——」


「それ以上言うなら、
どうなっても知りませんよ?俺が」


「え……どうなるの?」


「まずは一旦、泣く」


「可哀想。そっとしとくね」


「ほんと鬼」


「や、やば。気付いたら、朝礼始まってんじゃん」


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