君がいなけりゃ、意味がない

3







「なんか私…………麻痺してるかも……」


「え。どういう症状?」


「や、普通に受け入れちゃってたけどさ……
休日に。会議室で。[餅つき]やる会社って、何?」


「ねー。しかも、本格的やし。
おかげで重労働っすよ」


「あは。すっごい喜ばれてたね、神崎くん。
貴重な男手だって」


「俺ら以外の若手、誰も参加してへんもんなー。
モテモテで困ってまいますわ」


「嬉しー?」


「いや、そんなに」


「あ、そーいえば。一昨日にさぁ。
別フロアの女の子から、神崎くんのこと聞かれたよ」


「え。何を」


「『好きな女の子のタイプは?』だって」


「……それ、先輩はなんて答えたん?」


「それはもう、正直に……」


「しょ、正直に…………………?」


「『知らない』って」


「そうですよねー」


「その子を大変ガッカリさせてしまったよ。
本当は、なんて答えるべきだった?」


「え」


「神崎くんって、なんとなくだけど……年上好きそうだよね」


「え゛」


「イメージはねぇ。
スラーっとしてて、黒髪ショートカットで、口元にホクロがあるような……"the セクシー"って感じ」
  

「……びっくりさせんといて。全然ちゃうよ」


「そっかぁ。良いセンいってると思ったのに」


「……あれです。
よく言う『好きになった人がタイプ』ってやつ」


「ほぉ。それなら、どっちみち参考になりませんなぁ」


「ある意味、正解でしたね」


「あ、それでね。
その子が『今度、連絡先聞きにいく』だって」


「へぇ……」


「嬉しー??」


「……ノーコメント」


「私から教えてもいいかわからなくて、伝えなかったんだよね。神崎くんの連絡先」


「当たり前でしょ。他人に教えるの禁止っすよ」


「よかった、正解だった。
やっぱり直接聞いてもらった方がいいよね、絶対」


「先輩……モチ、焼かんの?」


「えー。流石にお腹いっぱいだよ」


「……ほんまズルいわぁ。
俺にばっか、焼かせてさ」





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