君がいなけりゃ、意味がない

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「……大丈夫?今日、結構飲んだよね」


「…………大丈夫やないです」


「えぇ…… じゃあ、もう帰ろ?
思ったとおり、2月の海なんて寒すぎるよ。
なんにもないし。真っ暗だし」


「…………まだ帰れない」


「そうだよね……
まだ、叫べてないもんね。
さあ、どうぞ。あの水平線に向かって。思いっきり」


「いや、そんな奇行をするつもりはないんですよ」


「誰もいないよ?」


「そーいう問題とチガウ」


「えー。
あ、てかさ。ついに明日、内示出るね」


「………………明日、俺、有給」


「うん。明後日教えるね、異動先。
荷造り始めてた方がいいかなぁ」


「ほんとに聞きたくない………………」


「あ、興味ないって?」


「………………」


「無視かいっ」


「…………先輩」


「ン?」


「………………先輩にとって、俺って何?」


「え。また難しいこと言ってる」


「率直に」


「えーーー……5分ほしい」


「待つ」


「んー………………」


「……………………」


「神崎くんは、ねぇ……………………」


「……………………」


「うん…………"居てくれて良かった後輩"、かな?」


「こう、はい……………………。
………………"ただの後輩"ってこと?」


「えぇ?いや、"ただの"っていうか……。
てか"ただの"じゃない後輩って、どういうの?」


「俺にとって高宮先輩は、"ただの先輩"じゃないよ」


「え。じゃあ、何?」


「……………………聞いてくれる?」


「うん。聞くよ?」


「……………………」


「……………………」


「………………よし」


「お?」


高宮 咲(たかみや さき)先輩——」


「えっ……はい」



「好きです」



「え」


「初めて会った時から、ずっと好き」


「えっ」


「一生懸命で、前向きなとこも、
負けず嫌いで、へこたれない強さも、
ほんまはビビリのくせに、人一倍責任感強くて、後輩思いなとこも、
自分の気持ちに素直なとこも、
美味しそうにご飯を食べるとこも、
笑ったらできるエクボも」


「え。ちょ……ちょっと……」


「全部憧れで、全部可愛くて、全部好き」


「………………」


「会社でもイベントでも、いっぱい一緒におったら、ちょっとは俺のこと意識してくれるかなって、思っとったけど…………」


「…………………………」


「……結局、俺のがもっと好きになっただけやった」


「あ、あの……その……結構、酔ってたりする?」


「どシラフ」


「わーお……。
な……なんで、このタイミングで」


「俺は土壇場にならな、覚悟が決まらんタイプなの」


「えぇ………………」


「…………どこにも行かんといてよ、先輩」


「そう言われましても……」


「毎日思ってる。『時が止まればいいのに』って」


「そう……なんだ……」


「引いてるやん……」


「いや……ちょっと……びっくりして」


「……困らせてごめん」


「ううん……そうじゃなくて……。
あの……こんなこと聞くの、どうかと思うけど……。
……私は、なんて返事したらいい?」


「…………まだ、返事はいいです。
気持ちを伝える覚悟はできてたけど……
振られる覚悟は、できてないから」


「そっ……か……?」


「……やっぱり振るんや、俺のこと」


「え。いや……何も言ってないじゃん」


「だって否定してくれんかったし」


「ええ……言ってることメチャクチャだよ」


「俺は……これからも、先輩に会う理由がほしい。
遠くなって、見えんくなっても、大丈夫って思えるように」


「………………」


「…………だから、
ちゃんと考えてくださいね。俺のこと」


「う、うん…………わかった…………」





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