君がいなけりゃ、意味がない

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「ばばばBBQ〜♪」


「へいへいっ」


「キミもBBQ〜〜♪」


「いやどんな歌詞」


「うるさいなぁ。
邪魔しないでよ、高宮オリジナル鼻歌リサイタル」


「合いの手で盛り上げてあげてたんやん」


「頼んでないんだけど」


「自分、言われる前に動ける奴デス」


「いいから。
早く袋いっぱいにして、お肉にありつこうよ」


「全員の袋いっぱい分のゴミが落ちとんの、
結構問題やと思うんですけど」


「ねー。どうして人は、
一時のテンションで過ちを犯してしまうんだろう」


「あれ。なんか壮大な話してる」


「ゴミは正しくゴミ箱に。たったこれだけなのにね」


「ほんまにね。甘えてますわ」


「ばばばBBQ〜♪」


「キミもBBQ〜〜♪」


「へいへいっ」


「先輩」


「へい?」


「そろそろ、離れ難くなってきました?」


「あー。そういやあ、そんなこと言ってたね」


「もうすぐでしょ、面談」


「延長希望提出〆は、もうちょい先のはずだけどね。
出す気なかったから、ちゃんと見てないけど」


「今の部署、何が不満なんですか」


「ないよ、不満なんて」


「じゃあなんで」


「特に理由もないけど……まあ、色んな業務に挑戦していきたいとは思うかな。
それに、愛着があるからっていう理由だけじゃ希望は出せないよ」


「……生真面目。社畜」


「え、酷評?悲しみぃー」


「絶対思ってないやん」


「神崎くんは、希望出すの?来年」


「出すわけないやないですか」


「えぇ……人には出せと言っておいて」


「状況がちゃうんすよ。先輩と俺では」


「どう違うの?」


「いや、それは言われへんけど」


「えっ、なになに?
なんか重要な秘密を握ってるとか!?」


「……そんな複雑な話はしてないのに。
まあ、普通に俺が悪いんやけどさぁ」


「ねぇ、そろそろ袋いっぱいじゃない?戻る?」


「ダメっすよ。まだ隙間あるし、縦入れして押したらいける」


「詰め放題のプロ?」


「やから、もうちょっと一緒におろ」


「仕方ないなぁ」





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