ラブソード
 むかしむかしの江戸時代。
 とある山奥の神社に、ノリオくんという名の男の子が住んでいました。
 家族も親戚もいないノリオくんでしたが、寂しく感じることはありません。
 それはどこからか現れる妖怪たちと、いつも楽しく遊んでいたからです。
  

 遊んでいたのは、小坊主の姿をしたのっぺらぼう。
 顔が泳がすように首を伸ばし、幼いながらも花魁の姿をした、ろくろっ首。
 傘から片足だけを出し、大きな一つ目と長い舌を垂らした傘お化け。
 近くには、いつもお地蔵様に化けた狸もいました。
 五人? いえ、一人と四妖怪はいつも一緒に遊んでいました。
 時には野山を走ったり、時には川で水遊びをし、お腹がへればみんなでお芋や、山菜を取って食べていました。
 


 そんなある日の事、いつものようにノリオくんと妖怪たちが遊んでいた時の話です。
 日当たりの良い神社の前でカードゲームをしていると、のっぺらぼうの頭に鳥の糞が落ちてきました。
 皆の会話は止まり、のっぺらぼうは表情はわからないながらも、うつむきます。
 それを見て、ノリオくんは言いました。
「あっ、うんがついたね。これからきっと、いいことがあるよ」
 みんなが微笑むと、糞を落とされたのっぺらぼうは声を出し笑っています。
 空を見上げると、カラスが頭上を飛んでいました。
 この辺では見ることのない大きなカラスです。
 優雅にゆっくり二回飛び回ると、カァーカァーっと鳴きながら、お地蔵様の頭に泊まりました。
 
< 1 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop