夜空に咲く花火よりも美しい君の笑顔に色褪せることのない恋をした
「お久しぶりです。じゃあ私はこれで……」
「待ってよ」

 軽く会釈をして柚木くんの横をすり抜けようとした時、がしりと腕を掴まれた。先ほど名前を呼ばれた以上の驚きが胸を占めて、彼をこわごわと見上げる。

 その力強さは昔感じた怖さを呼び起こした。

「以前はごめん。俺、子供だったよな? 今は違うから……」
「そう、ですか」
「本当は君と仲良くなりたかったんだ。それなのにどう距離を縮めていいか分からなくて……ひどいことばかりしてごめん。頼む。どうか償わせてくれないか? 君に謝罪がしたい」
「いえ、もう昔のことなので……」

 なんとか彼の手を振り払い、急いでいる様子を見せながら、階段を降りようとする。
 だがその刹那――

「結菜」

 彼は以前と同じように私を呼び捨てで呼び、また腕を掴んだ。不快げに眉根を寄せると、「あ、ごめん。三葉さん」と呼び直してから手を離す。


「俺さ、今も兎谷学園に通っているんだ。こう見えて生徒会長をしてるんだよ。もう以前のような悪ガキじゃないから安心して」
「そうですか」

 興味なさげに相槌を打つ。すると、気にしていないのか柚木くんが私の顔を覗き込んできた。

「三葉さん、今年から高校生だよね? 学校、どこ?」
「……兎谷学園です」
「え? 戻ってきてくれたのか?」

 答えなければ帰してくれなさそうなので、いかにも渋々といった様子で答えた。すると、柚木くんの表情がパァッと輝く。


「貴方のために戻ってきたわけじゃありません」

 相変わらず不躾な人だ。
 まるで過去のことを許されたように接してくる彼に、私は怪訝な表情を隠さずに向けた。

「ごめん。やっぱりまだ怒ってる?」
「別に……」
「それなら良かった。これからは以前みたいにまた会えるかな? もし良かったら連絡先教えてくれると嬉しいんだけど」
「無理です」

 ぺこりと頭を下げると身を翻し、一気に階段を駆け降りた。
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