夜空に咲く花火よりも美しい君の笑顔に色褪せることのない恋をした

苦い思い出

 柚木和真……駅前にある大きな文房具メーカーの御曹司で、容姿端麗で、自信たっぷりで、人気があって、なんでも持っている男の子。なのに、私のことを目の敵にしている嫌な人。


 封じ込めていた記憶の蓋が開き、浮かんできたのは四年生の冬のこと。
 終業式を待たずして転校しなければならなくなった私との別れを惜しんで、友達が少し早めのクリスマスパーティーを開いてくれた日のことだ。

 あの日はすごく楽しくて、でもめちゃくちゃ寂しくて、中々離れがたかったせいか……帰宅が少し遅くなってしまった。友達からのクリスマスプレゼントを大切に抱えて家路を急いでいると、目の前に柚木くんが現れたのだ。


 そういえばあのとき……警戒してる私に、ぶっきらぼうに小さな包みを渡してきたんだっけ。
 私は過去を思い出しながら、歩をゆるめた。

 今思えば彼もまた私にプレゼントをくれようとしていたのかもしれない。
 だけど、今までのことがあったせいか、素直に彼の好意を受け取れなかった私は激しく突っぱねた。すると、怒った柚木くんが私の手にあるものを奪い取って地面に投げつけたのだ。

 そして踏みつけた。
 足もとで無残に潰れたプレゼントの箱を見て、自分に向けられた友人たちの思いまでをも踏み躙られた気持ちになって、すごく悔しかった。
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