逃げ道を探すには遅すぎた
運命の出会い
十九世紀のイギリス。今日も空は曇り空。この国に来てから、晴れた日を見れたのは片手で数える程度かもしれない。

青と白で統一された豪華な調度品が置かれた部屋の窓の外には、一面森が広がっている。ここは森の中にあるお屋敷。私はここから出たことがない。

「窓、開けようかな」

椅子から立ち上がって歩き出すと、ストラップ付きのシューズを履いた足元でジャラジャラと音が響く。私の足には鎖が巻き付けられていて、この部屋から自由に出ることは叶わない。

おまけに私が来ているのは、現代に行けば写真スタジオでしか着られないようなドレスだ。多分、写真スタジオに並べられているものよりも重そうだけど……。

鎖と重いドレスのせいで早くは動けない。ゆっくりと歩いて窓を開ける。風が私の黒髪を撫でていった。その時。

「雫(しずく)」

名前を呼ばれた。その途端に抱き締められる。少し顔を動かせば、海のような青い髪が見えた。

「よかった。ちゃんといい子でここにいた」

「逃げたくても逃げられないよ」
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