逃げ道を探すには遅すぎた
グリグリと顔を押し付けてくるその姿は、まるで甘えている猫みたいだ。しばらく抱き締められていると、ドアが優しくノックされた。そして、流れるような金髪が見える。

「雫、シャノン、お茶にしましょうか。今日は雫の大好きなアールグレイです。お茶菓子はマドレーヌを焼きました」

「おっ、ウィリアムいいねぇ。ちょうど執筆に疲れて頭が糖分をほしがってたんだ。まあ、マドレーヌくらいじゃ満たされねぇだろうけどな」

私を抱き締めていたシャノンがようやく離れてくれた。すると抱き上げられる。

「きゃあッ!」

突然のことに驚いてしがみついてしまう。シャノンは楽しそうにククッと笑った。

「やっぱりあんたは可愛いよ、雫。ここに閉じ込めて正解だ」

「ええ。こんなにか弱くて可愛らしい人はすぐに攫われてしまう」

いつの間にか、ウィリアムも私の近くにやって来た。そして私の髪や手の甲にキスを落としていく。

私の毎日はある日突然変わってしまった。今までは色褪せた何もない毎日だったのに、今ではこうして狂った二人の愛を受け止めている。
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