逃げ道を探すには遅すぎた
再会と溺愛
何か騒がしい。ザワザワと色んな音が聞こえてくる。それに気付くと意識がゆっくりと浮上して、私は目を開けた。そして呟く。

「……どこ?」

目の前に広がっていたのは病院でもあの神社でもなくて、住宅街のようなところだった。でもおかしい。家はヨーロッパっぽいし、道路はアスファルトじゃない。

道を行き交う人たちが不審そうな目で私を見ている。その格好は現代の人たちの格好じゃない。ドレスとかだ。しかも日本人っぽい人はどこにもいない。

「えっ、何?天国ってこんな感じの格好が当たり前なの?」

私は自分の服装を見る。デニムパンツに白いブラウス。ドレスなどを着ている人たちの中でこの格好は浮いてしまう。

「どうしたらいいんだろう……」

その時、どこかで鐘の音が鳴り響いた。何となく音のした方を向いた私は驚く。あの建物、テレビなどで見たことがある。イギリスのロンドンを代表する建物ーーービック・ベンだ。

「何?一体どういうこと?」

天国にもビック・ベンがあるの?いや、そんなはずないだろう。混乱しながら後ずさると、ブラウスを誰かに掴まれる。
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