逃げ道を探すには遅すぎた
「雫、俺らから絶対に逃げんなよ」

「雫、僕たちだけを見ていてください」

シャノンの青い目とウィリアムの赤い目が私を見つめる。それは決して獲物を逃がさない猛獣のような目だった。私は笑みを浮かべる。

「どこにも逃げないし、ずっと私は二人を見てるよ。だって私は二人がいないとこの世界で生きていけないから」

足の鎖と重いドレス。そして足を踏み入れれば迷子になってしまうであろう森。ここは私を閉じ込めるために作られた牢獄。でも、この中で過ごすのが心地いい。

全ての始まりは、今から一年ほど前ーーー。



二十一世紀。日本・東京。

「んんっ……」

辺りがやけに明るい。私、雪村(ゆきむら)雫は枕元に置いてあるスマホを手に取る。時刻は午前十一時を回ったところだった。朝寝坊してしまった。

(まあ、今日はバイトないしいっか)

大学受験に失敗して家を追い出されて数ヶ月。色んなバイトを点々として今日を生きている。贅沢はそんなにできないけど、あの頃に比べたら自由で毎日が楽しい。
< 3 / 49 >

この作品をシェア

pagetop