逃げ道を探すには遅すぎた
縋るような声だった。胸が痛くなる。ウィリアムの目は泣きそうで、彼もずっと私のことを覚えてくれていたんだとわかった。

「私は、ずっとあなたが好きなんです。雫を愛しているんです」

耳元で囁かれた告白。予想はしていたけど、言われると戸惑ってしまう。どうしよう。

「私ーーー」

「言わなくても大丈夫です。これは雫を手に入れるための宣戦布告です」

ウィリアムはニコリと微笑んだ後、私の背後の方に目を向ける。私も首を動かしてウィリアムの視線を追った。そこにはいつの間にか会場に戻っていたシャノンがいた。彼は不機嫌そうな顔で私たちを睨んでいる。

平穏な生活に、大きな波が訪れようとしていた。













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