逃げ道を探すには遅すぎた
離れようか
舞踏会から数週間。私の生活は大きく変わってーーーいや、十九世紀にタイムスリップしている時点で変わり過ぎなんだけど……。深く関わる人がシャノン以外にもう一人増えた。それがウィリアムだ。

「ハァ〜……。執筆やっと終わったわ〜」

肩をグニグニと揉みながらシャノンが自室から出て来る。私は「紅茶、用意するね」と言ってキッチンへと向かった。この時代にパックの紅茶なんて便利なものはない。最初は淹れるのは大変だったけど、本を読んで勉強したおかげで何とか紅茶を淹れれるようになった。まあ、貴族の屋敷に仕えている執事の方が上手なんだろうけど。

お湯を沸かしてポットとカップに注いで温める。次にポットに茶葉を入れる。細かい茶葉は中盛りで大きい茶葉は大盛りにするのが目安。沸騰したお湯を注いですぐに蓋をして蒸らしてーーー。

「雫」

お茶を用意する私にシャノンが抱き着いてくる。急に抱き付かれて驚いた私の口から変な声が出た。

「シャ、シャノン!危ないから離れて!」

「嫌だ」
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