逃げ道を探すには遅すぎた
シャノンは私の肩にグリグリと頭を押し付けてくる。髪が当たって擽ったい。私を拘束する腕にさらに力が込められて逃げられない。

「シャノン……」

「雫、愛してる。どこにも行くんじゃねぇぞ」

温かくて柔らかい感触がした。キスを落とされたんだ。次々と首の辺りにキスの雨が降り注ぐ。これはまるで恋人同士がイチャついているみたいだ。

「シャノン、ちょっと離れて」

「嫌だ。紅茶はいい。雫がほしい」

シャノンは駄々をこねる子どもみたいに何度も言い、私をキッチンからリビングへ連れて行く。紅茶はもうとっくに蒸らし過ぎになっているんだろうな。

「ちょっとシャノン!」

「雫……」

シャノンにソファに押し倒された。起き上がろうとすると手を掴まれて拘束される。シャノンの体を退けようとしても、細身の割に筋肉があって動かない。格闘技でもやっているのだろうか。

「シャノン、ちょっと退いて。近いよ」

「あ?退く必要ねぇだろ。こうでもしなきゃ雫は意識してくれねぇじゃん」
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