逃げ道を探すには遅すぎた
そう言い、シャノンは私に顔を近付けてくる。子どもの頃から整った顔立ちだったけど、大人になってさらに華やかになったな。女の人にモテてると思う。

……って、そんな余裕はないんだ。私は勉強ばかりさせられていたから、男性と付き合ったことなんて当然ない。こんなこと、初めてでーーー。

「シャノン!」

私のことなんてお構いなしでシャノンは好き勝手に唇を落としていく。時々ピリッとした痛みが走るのはどうしてだろう。何だか頭もふわふわするし、何もかもがめちゃくちゃだ。この気持ちは何なんだろう。

(あっ、どうしよう……)

ふわふわしてどうでもよくなってしまう。その時だった。現実に引き戻すかのように玄関のチャイムが鳴る。お客さんが来たみたいだ。

「シャ、シャノン!お客さん来たから!」

「チッ!」

シャノンは顔を歪ませて舌打ちをしながら私の体から離れる。さっきのシャノンの顔は、まるで彼の書く小説に登場する凶悪犯みたいだった。

「は〜い」
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