甘い恋にはお花をそえて

素敵なお花屋さん

家の最寄駅から一駅。
その駅の近くの小さな和菓子屋さんは、私のアルバイト先だ。
お昼過ぎから閉店の十九時まで、お団子や大福に囲まれて過ごしている。

就職はしたものの事務職での会社勤めは長くはつづかなかった。
今の私は『アルバイト 実家暮らし』というワードの中だ。

学生時代からの恋人は、私と違って就職してからバリバリ働きはじめて話も時間も合わなくなって、呆気なくフラれてしまった。

仕事も恋も上手くいかない自分を自分で責めたりもしたけれど、そんなときに食べた豆大福が美味しくて元気をもらったから、そのお店のバイト募集の貼り紙に食いついてしまった自分がいた。

そしてそのお店でアルバイトでの採用が決まって働きはじめてから、もうすぐ三ヶ月がたつ。
バイト先へは、飲食店や美容室が並ぶ大通りに面した道を歩いて向かう。
すっかり歩き慣れて、いつか入ってみたいと思うお店も増えていくばかりだ。

かわいらしい店構えの洋食屋さんはオムライスが美味しいと噂に聞く。
お昼過ぎには売り切れてしまうこともあるというパン屋さんもとても気になっている。

そして、いつも通りすがりにそっと店の中を覗き見てしまうのはお花屋さんだ。
花たちは色鮮やかにお店の奥まで並んでいて、カウンターでは背が高くてスタイルのいい男性が二人。
いつもテキパキ、ときに談笑しながら働いている。
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