甘い恋にはお花をそえて

ファンになるしかない

自分でも自分の背中を押すべく、帰りにバイト先のそばにあるショッピングモールで一輪挿しを買った。
お花デビューの準備を整えて、いつもの大通りを通って帰る。
ドキドキしながら二十時閉店間近のお花屋さんに飛び込むと、カウンターでパソコンを見ていた男性がサラサラの黒髪をなびかせるように顔を上げた。

「いらっしゃいませ」
「ま、まだ大丈夫ですか?」
「はい!ごゆっくり」

にこりと微笑む男性店員のその笑顔にお支払いをしたくなるくらい素敵だった。
白いシャツの腕をまくり、デニムにスニーカー。そしてブラウンのエプロン。
遠くから——お店の外から見るよりも、ずっとずっと素敵だと思った。

いやいや、目的は自分へのお花を買うことが第一である。

第一の目的を思い出し、あわてて店内を見渡すと色とりどりのお花がどれもかわいくて、きれいで圧倒された。
そしてどのお花を選ぼうか悩みに悩み、閉店時間もあるのにと、私は慣れないお花屋さんでただただ焦ってしまう。
こんなことなら勢いに任せて寄らずに時間があるときにゆっくり見にくれば良かった。
そんな後悔をしていると、カウンターにいたはずの店員さんがいつの間にか隣に立っていて目と目が合う。

「迷っちゃいますね?」
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