甘い恋にはお花をそえて
「ああ、それはきっと弟さんだと思う」

山木さんにお花屋さんに行ったことと感想をそれとなく話すと、あの子かわいいわよねと年上らしい目線の感想が返ってきた。
やっぱり女性ファンは多そうだ。

「お花も接客も素敵だったんですけど、通ってもいいものか……しかも一輪だけっていうのも……」
「あら、花純ちゃんだって大福ひとつも丁寧に包むし、ファンみたいなお客様ももうついてるじゃない?」
「それは娘とか孫とかに近い感覚で接してくださるお客様で……」
「はは!そんなにうじうじするほど好きになっちゃったの?」

確かにうじうじしていた私は山木さんに笑い飛ばされて自分の感情が恋に近いのだと悟る。
なんだろう、これはフラれた傷跡を癒すべく惚れっぽくでもなっているのだろうか。

「お仕事してるだけなのに、迷惑ですよね」
「それは彼が決めることだから、花純ちゃんが好きでいるのは自由だと思う」
「山木さん、お客様に好きって言われたらどうしますか?」
「愛する夫がおりますので」
「……そうですよね。結婚してるかもしれないんですよね」

遠くを見てそう言った私を山木さんは面白そうに笑っていた。
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